健康を考える

 
長野県中小企業団体中央会が発行する機関誌「中小企業レポート」に組合員が“健康を考える”シリーズを掲載しています。このサイトにも転載しますのでご覧下さい。

 タイトル

著者

診療科目 

掲載

デンタルインプラントについて 布山 徹さん 歯科 12.1

 

 タイトル

著者

診療科目 

掲載

五十肩と石灰沈着性滑液包炎 張 洛善さん 整形外科 11.12
リウマチについて 穂苅行貴さん リウマチ化 11.11
ニキビの話 太田由子さん 皮膚科 11.10

痛風と高尿酸血漿 

鈴木都美雄さん 

泌尿器科 

11.9 

喘息死を予防するために 

清水武彦さん 

アレルギー科  

11.8 

アレルギーをめぐる誤解はなかなか消えない (2)

蓑島宗夫さん 

アレルギー科  

11.7

更年期症候群いわゆる更年期障害 三浦秀輔さん   産婦人科   11.6 
肝臓に感謝を!−薬やアルコールと、けなげな努力をする肝臓の話− 宜保行雄さん  内科   11.5 
放射線と甲状腺のお話 丸山正幸さん   内科 

11.4  

口腔と全身の病気の関係5 掌せき膿疱症その他の疾病  鈴木信光さん     歯科  

11.3  

口腔と全身の病気の関係4 動脈硬化と心筋梗塞・脳梗塞、胃潰瘍、早産など  鈴木信光さん   歯科  

 11.2 

口腔と全身の病気の関係3 骨粗しょう症、頚部蜂窩織炎、シェーグレン症候群 鈴木信光さん   歯科  

 11.1  

 

 タイトル

著者

診療科目 

掲載

口腔と全身の病気の関係2 誤嚥性肺炎  鈴木信光さん    歯科  

10.12   

口腔と全身の病気の関係  鈴木信光さん    歯科  

10.11  

それも金属アレルギーなんですか?  二條貞子さん    皮膚科 

10.10

ほんとは怖い睡眠時無呼吸症候群  神谷誠さん    歯科  

10.9 

睡眠時無呼吸症候群  河原田和夫さん  耳鼻咽喉科 

 10.8 

夏に多い結膜炎について  多田博行さん   眼科 

10.7 

アルコールで失敗しないために  宜保行雄さん   消化器内科 

10.6 

アレルギーをめぐる誤解はなかなか消えない  蓑島宗夫さん  アレルギー科 

10.5 

トラウマって何のこと  加藤信さん   精神科 

 10.4 

肛門科医の独り言 渡辺豊昭さん  肛門科 

10.3

腰痛  花岡徹さん  整形外科 

10.2 

補聴器  三田温さん  耳鼻咽喉科 

10.1

 タイトル

著者

診療科目 

掲載 

口臭の原因  布山徹さん   歯科 

09.12

腎不全の治療と寿命 山崎徹さん  内科 

 09.11

いびき 鈴木信光さん  歯科 

09.10 

あなたは大丈夫?バセドウ病のお話  丸山正幸さん  内科 

09.9 

たかがみずむし されどみずむし  二條貞子さん  皮膚科 

09.8 

「記録」の効果  伊佐津和朗さん 歯科 

09.7 

 「子どもの心」相談の診療から 矢崎なつめさん  小児科 

09.6 

たとえ認知症になったとしても 長崎忠悦さん  脳神経外科 

09.5 

ゴルフ練習後の恐ろしい背胸部痛! 張 洛善さん 整形外科 

09.4 

多重債務問題 加藤信さん  精神科 

09.3 

眼疾患・人生行路  多田博行さん  眼科

09.2 

夜尿症について  新川一雄さん  小児科 

09.1

タイトル

著者  

 診療科目 

掲載 

痔疾患番外編 渡辺豊昭さん  肛門科 

08.12 

不妊について 三浦秀輔さん  産婦人科 

08.11 

認知症の理解のために 中島勉さん  内科 

08.10 

高度な人間業をこなしている喉の話 三田温さん  耳鼻咽喉科 

08.9 

本当は怖い歯ぎしりの話 布山徹さん  歯科 

08.8 

住宅と住まい手の健康のかなり深い関係   蓑島宗夫さん  アレルギー科 

08.7 

微生物との共棲、共生を円滑に 河原田和夫さん  耳鼻咽喉科 

08.6 

親しらずの抜歯は怖いですか? 小塚一芳さん  歯科 

08.5 

紫外線と皮膚 二條貞子さん 皮膚科 

08.4 

帯状疱疹の話 萱場泓郎さん  麻酔科

08.3 

スポーツに伴う中高年の膝関節痛 張 洛善さん  整形外科 

08.2 

心の病にどう対応するか 加藤信さん  精神科 

08.1 

五十肩と石灰沈着性滑液包炎

Q 肩の激痛で受診しました。「肩関節周囲炎で滑液包張先生.jpgに石灰沈着があります。」と云われました。どんな病気ですか?

 

A 肩関節周囲炎とは肩関節の軟部組織の炎症によって痛みと関節の動きが悪くなる病気です。

50才ごろに好発するので一般的に五十肩と云われます。痛みのために髪が結えない(腕が上がらない)、帯が結べない(手が後ろに回らない)、洋服の着脱や物を持ち上げることもできず、ゴルフスウィングもつらくお尻に手も届かないと云った状態です

肩の痛みが誘因なく起こり、急速に増強する(急性期)、数週から数カ月すると自発痛は和らぐが、動きが悪くなり運動時痛が固定してきます(拘縮期)。多くの場合痛みが治まってから1〜2年で症状は自然に軽快します(回復期)。の3期に分けられます

原因ははっきりしませんが中年以降にみられることから肩関節の老化も関与していると思われます肩関節は他の関節と異なり 球状の上腕骨骨頭が肩甲骨のくぼみにはまり込んでいますがそのくぼみが小さく浅いため関節が不安定です。

そのため骨の周囲の関節包や筋肉、腱や腱板靭帯などの軟部組織で補強されており、常にストレスがかかりやすく、炎症や癒着が起こりやすいと考えられます診断技術が発達し、肩の痛みの原因が分ってきました。

腱板の老化や腱炎・断裂などの肩腱板障害、肩峰下滑液包炎、上腕二頭筋長頭腱炎、石灰沈着を伴った石灰沈着性腱板炎や石灰沈着性滑液包炎などは広い意味での五十肩(肩関節周囲炎)に含まれていましたが、このような診断名がはっきりしたものは最近では五十肩から除外されております。

 

あなたの病気は上記の石灰沈 着性滑液包炎と思われます。激痛が急激に起こり、じっとしていても、ことに夜間痛が激しくちょっと触れても、ちょっと動かしても悲鳴をあげるほどで震えが来るほど痛かったと思います

診断は問診で何処がどのように痛くなったとか、どのようなときにどんな痛みがあるかとか詳しく聞きます。患部を触ったり、動かして診察します。レントゲン写真に石灰沈着像が認められることで診断確定できます

治療は患部に局所麻酔剤とステロイド剤を注入することで劇的に鎮静します。時には注射による石灰吸引も行われ、稀には手術で石灰を除去することもありますが多くは保存的療法で治癒します。中年以降の患者さんで、明らかな原因もなく肩の痛みと運動障害の起きるいわゆる。五十肩より治しやすい病気です。

長野県保険医協同組合理事 張 洛善

(松本市 あずさ整形外科医院)  

 


リウマチについて

リウマチというと、一昔前は関節痛を訴える疾患はすべてこのように呼ばれていました。現在はリウマチといえば関節リウマチを指すことが多いです。

関節リウマチは免疫異常が原因で関節に炎症が起こり、痛みや腫れを生じる病気です。免疫は、体外から侵入した外敵を攻撃して、自分の体を守る防御システムですが、自分の組織を外敵と思って攻撃してしまうことがあります。

 

このように、免疫に異常が生じ、自分自身を攻撃してしまっておこる病気を、自己免疫疾患といいます。関節リウマチも自己免疫疾患の一つです。関節は、骨、軟骨、それらを包む関節包でできていますが、関節包の内側にあって裏打ちを している組織が滑膜(かつまく)です。滑膜で関節をスムーズに動かす潤滑油剤の役目をする関節液が作られています。

関節リウマチでは、この滑膜が何らかの原因で攻撃され、炎症がおこり滑膜が増殖し隣接する軟骨や骨を浸食・破壊していきます。滑膜からは炎症をさらに増悪させる物質も分泌されます。

関節リウマチの発症には遺伝の関与も指摘されていますが発症すべてに遺伝が関与しているわけではありません。遺伝的素因に細菌やウイルス感染、疲労などの環境的要因が加わって発症すると考えられています。

患者さんの約7〜8割は女性です。関節リウマチの最初の症状は、朝のこわばりです。朝起きた時に両手が腫れぼったくて握りにくい、動かしにくいということがおこります。関、節の腫れや痛みは、手関節(指の第二関節(PIP関節)や付け根の関節(MCP関節足関節、足趾の付け根の関節。MTP関節)が好発部位です。

関節リウマチの診断は、欧州・米国リウマチ学会の基準日本リウマチ学会、厚労省研究班の基準などが用いられています。最近は、血液中の「抗CCP抗体」の測定が有用とされています。しかし、これでわかるのは全体の70%くらいです。

関節リウマチの治療の中心は、薬物療法です。基本は抗リウマチ剤を用いますが、当面痛みが強い期間は、ステロイド剤や抗炎症性鎮痛剤を併用します。抗リウマチ剤の効き方には個人差があり、自分に合った薬を探す必要があります。欧米では「メトトレキサート」という、代謝拮抗剤の一種が抗リウマチ剤の第一選択・中心薬剤(アンカードラッグといいます)とされています。日本でもその傾向にあります。

また、最近は、抗リウマチ剤でコントロールがつかない場合に、関節の炎症を引き起こし増悪させるサイトカインという物質の働きを妨げる生物学的製剤が用いられています。やはり、日常生活に支障をおこすような関節の痛みや変形を防ぐには、悪性疾患と同じく「早期診断・早期治療」が大切です。

組合員 穂苅 行貴

塩尻市 穂苅整形外科リウマチクリニック

 

 

ニキビの話

nikibi.jpg昨年から“ニキビはお肌の病気だよ。”の合い言葉のもと、皮膚科でニキビ治療する方が増えてきているように感じます。ニキビは思春期に始まり、自然に治ることも多いのですが、20歳代・30歳代以降でも新たにニキビができることは珍しくありません。自然に治ることも多いニキビですが、ニキビの炎症が深部に進行していくと、皮下に根を張ったしこりとなり硬結と呼ばれる状態になります。また皮内に大きな袋ができる場合は嚢腫と呼ばれます。硬結や嚢腫になると、治療後に瘢痕(あばた)を残すことになります。瘢痕は一度できるとなかなか良い治療法がありません。早くから適正なコントロールをすることが、ニキビ対策の最大のポイントです。


 ニキビの発症には、皮脂・角化異常・ニキビ菌・炎症が相互に作用しています。治療には、レチノイド様外用剤、抗菌薬の内服・外用、ケミカルピーリング(保険適用外)などの処置法があります。特にレチノイド様外用剤は、ニキビの前段階を治療する薬で、 ニキビのコントロールに有望な治療薬です。
 日常生活の注意点としては、@ニキビをいじらないこと。Aバランスのとれた食事。B便通を整えること。C睡眠を十分にとること。D頭髪や衣類によるニキビへの持続的な刺激を避けること。E毛包内の皮脂の流出をよくするために、ぬるま湯で石けんを使って洗顔すること。Fリンスなどのヘアケア製品が、首・胸・背中に残らないように配慮することが大切です。


 最後に化粧についてですが、ポイントは2つあります。1つは毛孔(毛あな)を閉塞させないようにすること、もう1つは皮疹を目立たなくすることです。クリームタイプやリキッドタイプのファンデーションは塗る際にスポンジや手指でこするため、ニキビの悪化因子となる可能性があります。ニキビの方は、毛孔を閉塞させないためにも、 油分の配合が少ないパウダータイプのファンデーションがよいでしょう。 皮疹を目立たなくするためには、色の干渉を利用して目立たなくする方法があります。例えば肌色のファンデーションをつける前にグリーンの下地クリームを使用するとニキビの赤みが相殺され褐色調になります。また炎症後色素沈着には黄色のファンデーションを使用すると褐色調が目立たなくなります。また頬紅・アイメイクやリップメイクなどのポイントメイクで視線を皮疹から他部位に移すという方法も効果的です。 たかがニキビ、されどニキビ。ニキビのためにQOL(生活の質)が落ちることのないよう、上手にコントロールしましょう。  

太田皮膚科クリニック(安曇野市)
 太田 由子

痛風と高尿酸血症

 痛風は歴史的にも著名人が数多く罹患したとされております。古くは、マケドニアのアレクサンダー大王に始まり、元のフビライ、芸術家のミケランジェロ、宗教改革のマルチン・ルソー、科学者のベンジャミン・フランクリン、アイザック・ニュートン、チャールズ・ダーウィンも痛風に罹患したとされます。
 痛風はいわゆるグルメの病気といわれ、贅沢な食をしているとかかるんだと我々も子供の頃から聞かされてきました。しかし、日本人全体の食事が昔より贅沢になったことは事実ですが、贅沢な食事(=プリン体の多い食品)を摂ることだけが高尿酸血症の原因ではないことがわかってきました。

 

 わが国において、1950年代までは年間100例にも満たなかった痛風は高度成長期に患者数も急増したといわれています。その後も伸びつづけて、国民生活基礎調査(厚生労働省)によると1987年には25.5万人だった通風患者は、1998年には約2倍の59万人に増加しました。

 


 痛風の原因となっている高尿酸血症はどうだったかと申しますと、1970年代には男性の約15%が高尿酸血症(尿酸値7.0mg/dl以上)でしたが、2006年の大規模調査では男性の26.2%(男性の4人に1人)が高尿酸血症と報告されております。


先程述べたように、もともと高尿酸血症は一般にはプリン体の多い食物を摂取することにより生ずると言われておりますが、意外にも肥満そのものからも生じております。


肥満→インスリンの抵抗性増大→高インスリン血症→尿細管での尿酸の再吸収の促進→血清尿酸値の上昇という図式が成り立っているといわれており、又、果物に多く含まれるフルクトース過剰摂取が血清尿酸値を高めています。本来プリン体を含まないフルクトースがインスリンを介さず肝に取り込まれ、急速なATP消費を伴って尿酸が産生されます。このようにフルクトースのような糖質の摂取も高尿酸血症の原因となっています。


 
 最近はプリン体オフのビールとか色々宣伝されておりますが、アルコールそのもので血清尿酸値は上昇します。アルコールを全く飲まない人に比べ、アルコールを1日50g以上摂取する人は痛風の危険度が2.5倍になるといわれております。


一方、高尿酸血症と生活習慣病の1つ高血圧症と合併するとどうなるでしょうか。統計上は狭心症や心筋梗塞の発生率が上がることが証明されております。又、他の報告では高血圧症の合併がなくても血清尿酸値が8.5mg/dlを越えると正常値の方に比べ、虚血性心疾患は1.7倍起こりやすく、脳血管障害は2.5倍起こりやすいといわれております。


 
 治療については、血清尿酸値7.0mg/dl以上は高値といわれ要注意ですが、合併症の有無により高尿酸血症を治療するかしないか変わってきます。痛風の方はとりあえず炎症を抑える治療から開始しますが、痛風の方であればいづれ血清尿酸値を6mg/dl以下に維持することが望ましいとされています。痛風を発症していない方も血清尿酸値7mg/dl以上の方は一度かかりつけの先生に御相談されることをおすすめします。

 

鈴木泌尿器科(長野市)
 鈴木 都美雄

喘息死を予防するために

 

  「気管支喘息で死ぬことはない!」と思っていませんか。実はそうではありません。喘息は死に至る可能性のある病気なのです。統計によると、我が国の喘息死亡者数は、2000年以前には毎年5000〜6000人、2000年以降は3000〜4000人となり、2009年度には2000人台と減少しつつありますが、現在でもこれだけの多くの患者さんが喘息で命を落としています。
 喘息で死ぬ患者さんは重症者だけではありません。軽症、中等症の患者さんが急激な悪化でなくなったり、若者の喘息死が増えていることが問題になっています。また、高齢者は他の生活習慣病を合併していることが多く、元々軽症であっても、喘息発作が悪化すると、若年者より死亡の確率が高くなっています。いずれにしても、不適切な治療が喘息死につながります。

 気管支喘息は、慢性のアレルギー性炎症と定義されており、これを治療するために第一選択薬は吸入ステロイド薬です。1993年からこの薬が使用されるようになり、喘息死の減少、発作の予防に果たした役割は大変大きなものがあります。吸入ステロイド薬の改良、気管支拡張薬を含めた配合剤の開発もあり、我々専門家にとっては、気管支喘息のコントロールは昔に比べてずいぶんとやりやすくなったというのが実感です。しかし、まだ年間2000人近くの患者さんが死亡されている現状を鑑みると、決して満足すべきものではありません。
 これを受けて、「喘息死ゼロ」を目指して、日本アレルギー学会では、「喘息管理・予防ガイドライン」を作成し、学会員はもちろん、一般医家の先生方にもわかりやすい気管支喘息治療指針を普及しようと努めています。

 日本の喘息死者数は、10万人あたり8.7人で、カナダ1.6人、スウェーデン2.0人、オーストラリア3.8人、アメリカ5.2人と先進各国に比べて高く、この原因として吸入ステロイド薬が十分普及していないこと、適正に使用されていないことが指摘されています。
 吸入薬は、適切に使用(吸入)しないとその効果が発揮できません。吸入手技を確実に可能にするためには、薬の効能を正しく理解し、繰り返しやり方を指導していただくことが重要です。特に高齢者では1回では十分に吸入の仕方が会得できません。病態によっては、ドライパウダー製剤、エアロゾル製剤を使い分ける必要もあります。主治医によく相談して下さい。正しく薬が使えれば、喘息で死亡することはなくなり、より快適な毎日を過ごすことができるようになることでしょう。

   清水内科クリニック(長野市)
        清水 武彦

アレルギーをめぐる誤解はなかなか消えない(2) 

 

 アレルゲン回避だけではほとんど治りません

 皆さんは、アレルギー性疾患のおおもとの原因はアレルゲンだと思っているでしょうから、「アレルゲンからの回避だけで治すのは無理です」と医師から言われると、大抵は意外な顔をなさいます。実際、アレルゲンからの回避で病気が完治できるのは、スギ花粉症に対して外国(北海道でも可)に移住する場合ぐらいであり、他の花粉症(カバノキ科、イネ科、キク科など)となると、亜熱帯から亜寒帯までのたいていの場所に生えており、完全に避けることはまずできません。 ペットアレルギーも自宅の室内で飼うのをやめれば当面の症状は出なくなりますが、飼育中の別の住宅に行けば再発するし、高層住宅のエレベーターや公共スペースでも犬・猫と遭遇する機会もあるので、治ったと言える状況にはありません。ダニやカビも、極力減らすことできますが、身の回りから根絶するのは不可能です。
 このようにアトピー体質をもった人の多くは、身の回りにあるものに感作されて発症するので、完全に避けるなどというのはそもそも容易ではないのです。
 アレルゲン対策は、病状改善の足をひっぱらないよう、医師による正しい診断にもとづいて、治療の一環として適切に行われるべきものですが、それだけで病気を治せるものでないことをご理解ください。
 一方、アレルギー炎症を改善する薬物を用いた対症療法は、病状改善にとって最も有効な方法です。症状でお困りの場合や長期的にみて必要だと医師が判断した場合には、適切に継続していただきたいと思います。

市販のものを買って飲んでも体質はかわりません

 健康食品やサプリメントのたぐいを摂取したりすれば、体質がかわってアレルギー性疾患が治るかもしれないと思っている人も多いのですが、残念ながらほとんどが無駄な努力に終わります。よくなったという話が体験談として載っている広告もあるでしょうが、アレルギー性疾患は季節や年度によって変動したり、稀に自然治癒したりしていることをお忘れなく。使用した人の何分の1かの病状がよくなったなどという製品を、一部の人の体験談を信じて買ってみても、大切な貯えを減らしてしまいがっかりするだけでしょう。
 医学の到達点からみて有効率が高い根本治療と呼ぶことができるのは、アレルゲンに対して耐性ないし免疫寛容をつくり出す治療である、特異的免疫療法だけです。スギ花粉エキスを少ない量から徐々に増やして繰り返し注射を行う方法や、食物アレルギーの原因食物を毎日わずかずつ増やして食べてもらう経口耐性誘導法などがすでに実用化されています。いずれも専門医の指導のもとで行う治療ですので、くれぐれもご自分の判断でなさらないように。

  みのしまクリニック(松本市)
       蓑島 宗夫

更年期症候群いわゆる更年期障害

更年期とは、ヒトの年齢的な期間を示す医学用語です。

 

 更年期の不定愁訴
 生後28日までを新生児期と呼ぶのと同様に、45歳から55歳の間を「更年期」と呼びます。現在の日本人の平均閉経年齢は51歳ですが、この前後合わせて約10年間に出現してくる、心理的肉体的に不健康的な不都合状態、不定愁訴を「更年期症候群」と呼びます。

・以前の美しさが衰えてき た、肌のつやも悪くなり、 そういえば髪の毛も…
・ウェストは太くなってき ているし…節々も痛いし …疲れやすい…
・突然暑くなって汗が吹き 出し、胸がドキドキして めまいや耳鳴りもする。
・寝付きも悪いし、おしっ こも近い…とにかく頑張 りがきかないわ。
・内科では異状はないとい うが、なにか病気が隠れているのかしら?

 

女性に多く見られる環境変化
 この時期の女性に多くみられる環境変化を思い出してみましょう。

・今まで元気で、家庭菜園 でできた野菜を持ってき て、孫と遊んでくれたお じいちゃんが、入院する ことになってしまった、 困ったどうしよう。
・夫は課長になったのに給 料は上がらず、忙しいだけ で相談に乗ってくれる時間 もないわ。自分のストレス も相当あるみたい…
・この前まで素直だった息 子が、最近妙に反抗的だし、 受験もあるのに一体何を考 えているのかしら。誰に相 談すればいいのよ…

 

体の中での環境変化
 体の中では、卵子が無くなってくるので、エストロゲン(卵胞ホルモン)が減り、それを出させようと間脳視床下部から大量のゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)分泌され、視床下部にある他の神経中枢は統一が採れずメチャクチャです。このため、自律神経失調が起こってきます。
  
 こんな環境変化の下では誰でも参ってしまいますが、ホルモン変化を除いては、更年期でなくても起こりうることなのです。ちょうど時を同じくして出現してきやすい年周りなので、本人も医師も戸惑ってしまいがちです。

 

極めつけの治療法
 更年期症候群に対する治療法の極めつけは、原因療法である「HRT」すなわち「ホルモン補充療法」です。
 50年以上の歴史があり、欧米では50%以上の更年期女性に普及しているものの、日本では2%です。5年間の継続治療で10000人当たり8人だった乳がんが、11人に。これは30%の増加になったのだという報道のされ方があってから躊躇する人が増えたのかもしれませんが、日本人の特徴として、「自然のままがいい」といった思想があるようです。しかし、自然になった肝臓病や糖尿病では治療を求めますね。もちろん持病によってはこの治療が勧められないものもありますが。

印象に残る二人の言葉

  この治療法に関して、印象に残っている二人の言葉があります。一人は銀座でクリニックをやっている後輩の女性婦人科医です。
 「水がなくて枯れかかっていた花に水をやると、みるみる生気を帯びてきれいに咲き始める感じですよ!」
 もう一人は患者さんです。
「センセー、わたし損しちゃったみたい。我慢しないでもっと早くやれば良かったわ!」

 三浦 秀輔

上田市 三浦産婦人科 

肝臓に感謝を!−薬やアルコールと、けなげな努力をする肝臓の話−

 殆どすべての薬は肝臓で代謝させ、蓄積されるか、排泄されるかの運命をたどる。その中にはアルコール、ビタミン剤、インスタント食品の安定化剤、防腐剤なども含まれる。


 ひとが肝臓のありがたさを感じるのは悪酔いや二日酔いで、地獄のような苦しみに見舞われたときだろう。

 すなわち頭痛、吐き気、むかつき、だるさ、自己嫌悪感などで「もう飲まないぞ」と反省会をしていても肝臓がアルコール分を解毒分解しない限り一生続くのだ。永遠にこの症状が持続するように感じられる長い一日に終止符を打てるのは肝臓が頑張ったからにほかならない。
 どうしようもないご主人様のために肝臓が懸命に働き、苦しみの原因のアルコールやアルデヒドを分解無毒化したため、翌日にはまた、飲みたくなるのである。
 薬や食物でアレルギー反応が起こり、蕁麻疹や痒みが出現しても、原因物質を肝臓が解毒分解することで、数時間〜数日以内に消失し、回復するのである。もし肝臓が働かねば、一生ポリポリ全身を掻かねばならない。


 
 数年前、中国製痩せ薬「センノモトコウノウ」による急性肝炎が800人以上発生した。十数人が劇症肝炎へ進展し、4人が死亡した。
シンガポールでは22人が急性肝炎になり、一人が死亡。有名女優も劇症肝炎になり、死の直前に婚約者からの生体肝移植で救命された。


 この「センノモトコウノウ」には記載された生薬の他に乾燥甲状腺末と食欲を落とす、日米では使用が禁止されているフェンフルラミンが厚労省により検出された。亡くなられた方はフェンフルラミンによる肝毒性が原因の劇症肝炎と推定された。
 フェンフルラミンは心臓弁膜症や肺高血圧症という重篤な副作用を発症させる危険な侵入者であると肝臓が認識したのであった。心臓と肺臓を守るため、肝臓は獅子奮迅の活躍をしたが、自らも犠牲になり劇症肝炎になってしまったのだった。


 腎毒性のある薬の肝での解毒や分解が不十分だと、今度は「肝腎症候群」と呼ばれる腎臓障害が発生し、最悪腎不全になってしまう。



 このように、肝臓はご主人様を様々な苦痛から救うため、またほかの臓器を守るため、日々活躍しているのだ。神経や筋肉のように、歩いたり、走ったり、車の運転などの派手な活躍はみせない。しかし、食事で胃腸に入った物質を、有害物質と有益な物質に即座に分別し、分解解毒と製造、備蓄を24時間不眠不休でおこなっている。


 たとえば、便秘などで発生したアンモニアや芳香族アミノ酸の分解が不十分だと、錯乱、昏睡、異常行動、ひきつけなどが起こる。食物の蛋白質、脂肪、体内のホルモンをうまく分解や合成が出来なくなると、むくみや腹水、無月経や紫斑病などが出現する。顔もどす黒くなるし、男性ではインポテンツにもなってしまう。
 我々がそうならないのは今日も肝臓が涙ぐましい努力をしているからなのだ。
だから一日に1回は右上腹部にある肝臓をさすって「ありがとう。お疲れ様。」と言おう。

  宜保 行雄
 松本市 宜保内科 消化器・肝臓内科クリニック

放射線と甲状腺のお話

 東日本大震災の原発事故による放射能汚染のニュースが連日の様に報道されています。とりわけ放射性ヨード(ヨウ素)については甲状腺がん発症のリスクとの兼ね合いで論じられているため、不安感を抱かれた方も多いと思います。今回は放射線と甲状腺の関係について、お話したいと思います。

  

 今から半世紀以上前の一時期に日本でも放射線が水虫やにきび、あざ、扁桃腺やリンパ節の腫れなどの良性の病気の治療に使われていたことがあります。エックス線を体の外から照射すると、にきびがすぐに治ったり、扁桃腺やリンパ節も小さくなりました。当時は放射線の危険性についての認識はほとんどなく、逆にすぐれた効果が得られることから放射線治療が最良の方法であると考えられていたのです。ところが、それから数十年が経った頃、医師たちが今まで経験したことのない異変に気づきました。それは首のまわりに放射線治療を受けたことがある人の甲状腺に腫瘍が多く見つかるということでした。時をほぼ同じくして広島や長崎で原爆による被爆や死の灰を浴びた人々の中に年月を経て甲状腺に腫瘍ができてくることがつきとめられ、治療で使われた放射線の照射によって甲状腺の腫瘍が増えることが明らかになったのです

   

 首の周辺の病気に対して放射線治療を受けた人から甲状腺がんが見つかる確率は、一般の集団検診で甲状腺がんが発見される確率に比べ約10倍高いことがわかっています。ただし、若い時期に放射線の照射を受けている人ほど甲状腺がんにかかりやすい傾向があることから、育ち盛りの子供の甲状腺はエックス線に対して感受性が高いのではないかと考えられています。また、放射線の照射後に甲状腺機能低下症が起きることもあります。この場合、脳下垂体から甲状腺刺激ホルモンの分泌量が増加するため甲状腺がんが発症するという可能性もありますが、早めに甲状腺ホルモンを内服することで十分対応が可能です。  

 

 現在では良性の病気に放射線をかける治療は行われていませんが、悪性リンパ腫などでは首の辺りから上半身にかけて放射線を照射する治療が引き続き行われています。この場合、放射線の照射は病気を治すために代替のきかない有効な治療ですから、将来発症するかわからない甲状腺がんを恐れて治療を受けないことは本末転倒です。治療後に定期的な甲状腺の診察を受けることが大切です。

 

 さて、原発事故では放射能汚染という悪いイメージで報道されている放射性ヨードですが、バセドウ病や甲状腺がんの診断や治療にも厳格な管理のもとで使用されています。ただし発育中の小児では原則として放射性ヨードを用いた診断や治療は行ないません。これは前述のごとく放射線に対する甲状腺の感受性が高いことに加え、放射性ヨードは体内に取り込まれた後に甲状腺に高濃度に集積し、体の外からの照射に比べ非常に多くの放射線を出すためです。

 最後に、災害での被曝と医療のための被曝は分けて考える必要があることをご理解頂ければ幸いです。

 松本市 丸山クリニック
           院長 丸山正幸

口腔と全身の病気の関係5 掌せき膿疱症、金属アレルギーその他の病気

掌せき膿疱症、金属アレルギー


 手のひらや足の裏に多数の赤みを伴った水疱ができる病気です。口腔内の細菌が原因で起こる場合があり、進行した大きなむし歯で歯の根の先に起こったり、歯周病で起こることもあります。口の中が原因で起きた場合は歯科治療により原因を取り除くことで治癒します。歯にかぶせた金属が体に合わない場合も同じような症状が現れることがあります。この場合は金属を使わないとか、別の種類の金属に替えることで治ってきます。

 掌せき膿疱症はむずかしい名前ですが、某有名女優が罹患したことでこの名前を聞いたことがある方もいらっしゃるかも知れません。この病気の原因は「ビオチン欠乏」によるものという説が最も有効です。ビオチンとは体外からの摂取ではなく、腸内でつくられるビタミンH。腸内細菌の環境が悪化し、ビオチンがつくられない又は腸内細菌がビオチンを食べてしまい結果としてビオチン不足になって発病すると考えられています。掌せき膿疱症の人には糖尿病を併発している人も多く、喫煙も厳禁です。ニコチン代謝のためにビオチンが大量に使われるためです。腸内環境を改善しつつビオチンを体外から補給することで治ってきます。


 扁平苔癬


 原因が不明なこともありますが、歯科の金属によるアレルギーにより症状が出る場合があります。金属に接触する口の中の粘膜に紅い斑点・白い斑点や刺激のある痛みが現れたり、金属に接しない別の部位の粘膜や離れた皮膚に症状が出たりします。原因となる金属を他の金属などに替えることで良くなってきます。日頃から時計や装飾品などに対してアレルギーの出やすい人は要注意です。


 尋常性天疱瘡


 原因は不明ですが口の中の粘膜や皮膚の成分に対する自己免疫疾患です。中高年に多くみられ、自分で自分の組織を壊してしまう病気です。最初に症状が現れるのが口の中の粘膜であることが多く、ついで皮膚に大きな水疱が現れます。正常な皮膚を指で擦ると水疱が形成されます(ニコルスキー現象)。再発しやすい病気です。昔から口の中の傷は治りやすいといわれていますが例外もあります。



 認 知 症


 病気による脳の萎縮や脳血管性障害で正常に発達した知的機能が継続的・段階的に低下し、日常生活に支障をきたした状態です。認知症の進行防止改善には、手指の運動、噛むことによる食事、本人の興味を引き出すことなどによって脳の血流を改善し、脳の活性化を図ることが有効です。特に食事は毎日欠かすことの出来ない行為であり、患者さんが自分で噛み、食事をおいしく味わえることは認知症の防止・改善に有効なことが判ってきました。



 バージャー病


 日本に10,000人ほどの患者さんがいるといわれています。特に喫煙する20〜40歳代の男性に好発する手足の閉塞性動脈疾患です。この病気は末梢血管に閉塞をきたすために、手足に血液が十分供給されず酸素不足となり指やかかとに痛みや潰瘍を作ります。原因は不明で国の難病に指定されています。タバコを吸わない人にはほとんど現れません。この病気のヒト全員が中等度から重度の歯周病があり、患部の血管のほとんどから歯周病菌が見つかっています。また歯周病があるヒトの方がない人よりも潰瘍が悪化します。口腔ケアが行き届いた国ではこの病気が減少したといわれています。禁煙が最大の予防です。(シリーズ〜歯と全身の病気の関係 終わり)

鈴木 信光
 辰野町 鈴木歯科医院

口腔と全身の病気の関係4 動脈硬化と心筋梗塞・脳梗塞、胃潰瘍、早産など

動脈硬化と心筋梗塞・脳梗塞


 誰でも口の中には500種類以上の細菌がいるといわれています。昔から敗血症(菌血症)の影響として心内膜炎が起こることがあるということが知られていました。さらに最近、歯周病菌が動脈硬化や脳梗塞などの血管系疾患にも関わっていることがわかってきました。1999年に動脈硬化病巣から歯周病菌が発見されています。

 脳梗塞でも同じように歯周病性の細菌が関わっていると思われます。心臓の内側を覆っているのが心内膜です。この内膜に炎症を引き起こしたのが細菌性心内膜炎といいます。歯周病などで常に歯茎から出血をしている状態では細菌が歯肉から血管に入り、全身を回って心臓の弁などに付着します。通常、血管に入った歯周病の細菌は白血球に捕まり無毒化されます。しかし体の抵抗力が低下していたり、もともと心臓に異常のある人は細菌が付着しやすくなります。細菌の増殖が始まると血流が阻害され、よどんだ血液は固まって血栓を形成します。この血栓がはがれて再度全身を巡り、脳の血管や心臓の血管を詰まらせることによって脳梗塞・心筋梗塞を引き起こすと考えられていますが、詳しいことはまだ解明されていません。  


 胃潰瘍


 胃潰瘍の主な原因はピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)ということが判ってきました。ピロリ菌は胃酸の中でも生きていける細菌で、胃がんも引き起こすといわれています。口の中にもピロリ菌に似たキャンピロバクターという細菌がいて、歯周病ではこの菌が増加します。すると身体のほうでこの菌に対するアレルギー反応が起き、同時にピロリ菌に対してもアレルギー反応が起こります。そのため、歯周病と胃潰瘍の両方が悪化してしまうことが判ってきました。



 早産など


 歯周病が早産・低体重児出産に影響していることが10年ほど前から判ってきました。そして現在、歯周病菌そのものの影響と歯周病菌が出す炎症性の物質による影響の2つのことが考えられています。歯周病菌が直接、血管を通って産科器官にとどき産科器官に感染が生じる場合と、重症な歯周病の妊婦では持続的な歯肉の炎症で上昇した炎症性物質により、正常な出産時期前に分娩作用がひきおこされることが考えられます。

 妊娠すると女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)のうちプロゲステロンは毛細血管を拡張させ炎症反応を増大させます。さらにつわりにより口腔ケアが不十分だと歯周病が悪化します。妊娠中に歯周病が長引くと歯周病菌から出された物質が低体重児出産に関わってくるといわれています。さらに、生まれた赤ちゃんは虫歯にかかりやすく、進行が早いことも判っています。実際に低体重児出産の母親には歯周病が多いといわれています。また、早産の可能性が歯周病を持つ妊婦では7.5倍も高まるとも言われています。

鈴木 信光
 辰野町 鈴木歯科医院

口腔と全身の病気の関係3 骨粗しょう症、頚部蜂窩織炎、シェーグレン症候群

 骨粗しょう症


 骨粗しょう症は骨折につながる骨強度(骨密度と骨質)の低下する病気で、通常、症状はほとんどなく、骨折によって気づくことが多いので「沈黙の病気」と呼ばれています。

 わが国ではこの病気の正確な患者数はわかっていませんが、1,000万人程度ともいわれており、更なる高齢化により倍増すると思われます。人は20歳前後で骨量が最高値に達しますが、40歳前後から次第に骨量の低下をきたし年間1%以上といわれています。女性では閉経後数年は2〜3%ですがそれ以後は10倍に達します。

 骨は破骨細胞による古くなった骨の骨吸収と骨芽細胞による骨形成が繰り返されています。閉経後女性ホルモンのエストロゲンが不足すると破骨細胞の機能亢進が生じてきます。骨粗しょう症があごの骨に現れますと下顎骨がもろくなり、歯周炎が発現しさらには歯が動き出して抜かなければならなくなります。

 治療法は薬物療法が主になりますが、完全なものはなく、エストロゲン補充療法は心臓発作・脳卒中・乳がん・血栓形成などの危険があります。現在はビスホスホネート(BP)系製剤が主な治療薬になっていますが、最大の副作用は骨露出あるいは骨壊死です。1年以上の投与で発症率が急激に高まり、口の中では他の場所と異なり、感染性骨壊死が起こってきます。当然抜歯などは出来ません。

 副作用が現れた後の治療法はまだ確立されていませんので、BP投与の前に歯科治療を終了させておく必要があります。



 頚部蜂窩織炎


 治療されていない大きなむし歯があると、むし歯の穴から細菌が歯の根を通ってあごの骨に入ります。細菌の感染によりあごの骨が溶けると周囲の組織に炎症が広がります。特に、下顎の内側に感染が生じると炎症は急速に広範囲に広がり、そのために周囲が腫れて気管を圧迫して呼吸困難になることがあります。また首の筋肉と筋肉の隙間から、炎症が下方へ進み胸まで炎症が広がるとさらに重い感染症を引き起こし致命的になることもあります。
 また下顎の親知らずの周囲から感染することもあります。糖尿病などの基礎疾患があるとさらに症状が重くなります。



 シェーグレン症候群


 膠原病のひとつで主に中年の女性に発症し、原因不明の自己免疫疾患です。症状は目が乾き涙が出づらい乾燥性角膜炎や、口の中の乾燥、慢性関節リウマチなどがあります。唾液を作る唾液腺が炎症を起こし、唾液が出にくくなるため、口の中が唾液で洗われず不衛生になり、虫歯が多発し口臭が出たりします。唾液が少なくなると歯周病も進行しやすくなります。また口が渇くと粘膜が荒れたり舌が焼けるように痛んだり(舌痛症)入れ歯の安定が悪くなったりします。この病気に限らず、年齢とともに唾液の出る量が少なくなりますので、正しいブラッシングと定期健診は欠かせません。

鈴木 信光
 辰野町 鈴木歯科医院

口腔と全身の病気の関係2 誤嚥性肺炎

 高齢者の死亡は脳や心臓の病気が原因であっても、直接の死亡原因は肺炎が3分の1をしめ、その中のほとんどが誤嚥が原因と言われています。
 口の中には数千億もの細菌がいます。口の中のケアが悪いと、口の中の細菌が気管から肺に入り肺炎を起こす可能性が高まります。誤嚥性肺炎には食べ物が誤って気管に入る場合と、睡眠中に細菌を含んだ唾液を吸い込んでしまう場合とがあります。普通は細菌が誤って入りそうになっても咳をすることにより吐き出すことが出来ます。

 しかし高齢者の場合、吐き出す力が弱いだけでなく、反射が低下するためにむせるということもなく知らないうちに誤嚥性肺炎を起こすことが多くなっています。肺炎で死亡する人の90%以上が65歳以上の高齢者であり、70歳を越えると死亡率は急激に高まりますが、加齢が肺炎の直接の原因ではなく、加齢に関連したいろいろな病気とその患者さんのおかれた状況が原因だと考えられます。

 のどの奥(咽頭)は食べ物・水分・唾液などを食道に嚥下し、空気を気道に吸気・呼気する分岐点です。ここにはふたがあって、食道か気道かどちらか一方が開いたり閉じたりする仕組みになっています。このふたの動きが正常でなくなると唾液・逆流した胃内容物・食べ物が気管に入ってしまいます。この場合、普通は咳反射により咳が出て誤嚥物は外に出されるのですが、咳反射が弱いと気管に吸い込まれてしまいます。
 誤嚥はある程度やむをえない面もありますが、誤嚥による肺炎は防ぐことが出来ます。高齢者に対する口腔管理は歯科医師・歯科衛生士による歯・義歯を含めた徹底的な清掃と歯科治療それに摂食・嚥下リハビリテーションが必要になります。1ヶ月にわたる集中的な口腔ケアをすることにより嚥下反射と咳反射の改善が見られことがわかってきました。

 口腔ケアはインフルエンザなどの気道感染の予防にも有効です。ある施設ではインフルエンザの発症は10分の1以下に減少しました。誤嚥を起こさないためには歯みがきや食事のときの姿勢が重要になります。脳梗塞の後遺症などで麻痺があって座ることは出来ないが自分で磨くことが出来る場合は麻痺の出ているほうを向き横向きになって、麻痺のない手で磨きます。

 座ることも自分で磨くことも出来ない場合は麻痺のあるほうを下にすると誤嚥の危険がありますので麻痺のない方を向き横向きになります。体を横向きにすることが困難な場合は顔だけを横向きにして口の中の清掃・歯みがきをします。 介助が必要な人の口腔清掃や食事をとるときは30度程度体を起こして行いますが、あごをあげないことが肝心です。あごを上にあげて食事をするのは危険です。

鈴木 信光
 辰野町 鈴木歯科医院

口腔と全身の病気の関係

明治政府は1887(明治20)年から東京帝国大学医学部をはじめとして全国に帝国大学医学部を創設した。これは主に軍医を育てるためのものであり、歯科疾患は直接命にはかかわらないと言う理由で歯学部の併設は見送られてきました(以後歯科は私学によって発展を遂げることになるのですが)。今日でも一般の国民の間では歯科の治療は全身疾患に比べて後回しにされる傾向にあります。今回は歯科疾患が直接・間接に全身の病気にかかわり、放置すると全身疾患をさらに増悪させる主な病気について話します。

 一般的には自分の病気の原因(の一部分または大部分)が口の中から生じているとは思わない方が多いと思います。しかし、口の中の病気が全身に影響を及ぼしていることが意外に多く、また日頃から口の中の手入れが行き届いていないために歯の病気が進行し、その結果全身の病気が悪化することがよく見られます。病名を挙げてみます。@糖尿病A誤嚥性肺炎B動脈硬化と心筋梗塞・脳梗塞C早産・低体重児出産D骨粗しょう症E胃潰瘍F細菌性心内膜炎G頚部蜂窩織炎Hシャーグレン症候群I掌せき膿疱症J扁平苔癬K尋常性天疱瘡L認知症Mバージャー病など。

 口の中とそれぞれの病気の関係を説明します。@糖尿病には生活習慣には関係なく若年者にも起こるT型と生活習慣すなわち運動習慣や食生活に関係するU型があります。わが国では糖尿病が強く疑われる人(HbA1c:ヘモグロビンエーワンシー6.1%以上)は830万人、糖尿病の可能性を否定できない人は1,490万人で合わせると2,320万人となり、成人の4人に1人が糖尿病かその予備軍ということになります。
 歯周病は糖尿病の第6番目の合併症といわれ、喫煙により両者ともに悪化します。2,320万人のうちの30%近くの人が肥満(BMI26.4以上)(BMI=BodyMassIndex体重指数:体重÷身長÷身長=22を理想体重とする)となっています。

 一方、肥満人口は2,300万人に達し、そのうち約半数は糖尿病・高脂血症・高血圧症などの生活習慣病を併発しているといわれ、さらには歯周病との関連が言われています。T型糖尿病患者ではプラーク量の割りに歯肉炎の症状が顕著で短期間で歯槽骨の吸収が進行するので、早期の歯周病の診断と糖尿病の厳密なコントロールが必要になります。U型では血糖のコントロール(主にHbA1c)が悪いほど歯周病が進行し、また罹患期間が長いほど他の合併症とともに歯周病も悪化します。

 糖尿病は肥満を伴うことが多く、肥満そのものが歯肉炎の危険因子になるとも考えられています。不完全な歯みがきでは口の中に細菌が多く、インスリンに対する抵抗性が悪くなり、血糖値が高くなります。さらに、歯が動揺し始めると物が噛めなくなり、食事の量が減ったり食べるものが偏ると食事療法や薬物療法を正しく進められなくなったりします。歯周病を放置すると糖尿病そのものに悪影響を与え、血糖コントロールが悪いことでさらに歯周病が進行して行きます。たった1回の全顎のスケーリング、ルートプレーニング(歯石の除去と歯の根元の研磨)でHbA1cが改善することもあります。抗菌療法を併用した歯周病治療により、血糖コントロールがしやすくなります。歯科では可能な限り歯を残し、噛みあわせを改善することを目指しています。

鈴木 信光
 辰野町 鈴木歯科医院

それも金属アレルギーなんですか?

 アレルギーは、生体が自分にない物質を異物と認め、それを排除しようとする現象です。植物、薬物その他あらゆるものが異物になりうるのですが、かたい金属とて例外ではありません。歯科、整形外科などで使われる医療用のもの、ネックレス、腕時計、ピアスなどの装身具、そして楽器、Gパンの金具等々、挙げればまだまだあります。これらに使われている金属はと言いますと、アルミニウム、金、スズ、鉄、白金、パラジウム、インジウム、イリジウム、亜鉛、マンガン、銀、コバルト、水銀、クロム、銅、ニッケルそしてチタンと金属の種類もたくさんあります。

 ここで実際の症例を紹介して話を進めてみたいと思います。
 Aさん(58歳、男性)は腕時計をつけた部分に湿疹が出るようになりました。これは汗の出る夏期に顕著でした。金属アレルギーを疑って、アレルギーが出にくいとされているチタン製の時計に替えたところ湿疹は全く出なくなりました(接触皮膚炎)。
 後日、歯科治療にそなえて金属のパッチテストをしたところ、亜鉛、マンガン、コバルトそしてクロムに陽性反応を認めました。歯科の先生にはこれらの金属を含まない合金で治療していただくように連絡をとりました。はたして金属にアレルギーがあるのか、数ある金属のうちどれに反応するのかを確かめるのがパッチテストです。金属アレルギーの診断には欠かせない検査法です。

 Bさん(19歳、女性)は両耳のピアス部位がジクジクしてその下がしこりになり、更に全身に湿疹が広がってしまいました。パッチテストの結果、ニッケルが強陽性反応でした。ニッケルアレルギーと診断して、両耳の病変部をしこりを含めて切除縫縮したところ全身の発疹はやがて消退しました。この方の場合、ピアスのニッケルが血液によって全身皮膚に運ばれてアレルギー反応を起こしたものと考えられます(接触皮膚炎症候群)。
 Cさん(26歳、男性)はニッケルを扱う仕事についています。手には常に湿疹があったのですが、あるとき、ニッケルが蒸発して全身皮膚が紅くはれてしまいました(全身性接触皮膚炎)。会社では職場転換を検討しているようです。

 Dさん(37歳、女性)。2年来、手のひら、足のうらに膿を持ったブツブツが出たり消えたりして紅く皮が剥げるようになりました。掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と診断され、原因の一つである扁桃炎もなかったため、金属アレルギーを疑い、金属のパッチテストをしたところスズに強陽性を示しました。スズ含有の金属を金合金に替えたところやがて症状はなくなりました。

 金属アレルギーには、他に歯科金属による舌炎、口内炎の局所的な症状、そして全身的な扁平苔癬(へんぺいたいせん)、貨幣状湿疹、汎発性湿疹といわれるものがあります。治りにくい湿疹、不思議な発疹、それは金属アレルギーかも知れません。

 二條 貞子
 松本市 二條皮ふ科クリニック

睡眠時無呼吸症候群2 ほんとは怖い睡眠時無呼吸症候群

 ひと頃は、笑いのネタにされることもあった「いびき」ですが、そこに怖い健康被害が隠れているのです。「いびき」に伴って、寝ている間に呼吸が止まってしまうことがあります。寝ている間の自分自身の様子は、なかなかわかりません。もしあなたの隣で寝ている大切な人の呼吸が止まっているようなら、早めに、耳鼻科や、睡眠外来への受診を勧めてください。たかが「いびき」と侮ってはいけないのです。


 人によっては、この呼吸が止まってしまう時間が1分以上も続くこともあります。またこの呼吸が止まる回数が、1時間に10回以上あれば、睡眠時無呼吸症候群という診断を受けます。実際この診断は、耳鼻科の医師が下すことになりますが、その程度が、中程度以下であれば、歯科医院に治療依頼がくることになっています。


 歯科医院では、睡眠時に口の中にはめるスリープスプリントというマウスピースを作ります。これには、寝ている間に下あごが奥の方に落ち込んで、気道をふさぐことを防ぐ目的があります。実際は、上と下の、全体の歯型をとり、模型を作ったうえで、上下のマウスピースを作成し、これを上下合わせて口の中に入れて夜寝る、というものです。最初は、口の中に異物感がありますが、慣れるのにはそれほど日数はかかりません。というのも、少しでもスプリントに慣れてぐっすり眠れるようになれば、自分自身で体調が良くなってくることにすぐに気づかされるようになるからです。 そもそも寝ている間に呼吸が止まるということは、本来、体も脳も休むためにある睡眠中に、かなりの時間息をこらえ、体を緊張させているようなもので、十分な休息がとれていない事になるのです。寝起きがすっきりしないばかりでなく、昼間急激な睡魔に襲われるなど、かなり危険な状況に陥ることもあります。 また、この寝ている間の息こらえが、心臓や、脳の血流に障害を起こすこともあると警告されています。


 人生の3分の1を占める休息のための睡眠が、体に害を及ぼす原因になるなんてかなり残酷な話ですが、それが早期の診断と正しい治療で、一転して健康な人生を送るカギになるのですから、ものは考えようです。 以前は、太った成人男性のトレードマークのように言われていた「いびき」ですが、最近は女性にもその症状があるとわかってきています。笑い話では済まされない、恥ずかしいなんて隠してはおけない、ぜひ早めに周りの人が教えてあげてください。
 意外に怖い、「いびき」があることを!

神谷 誠
 松本市 神谷歯科

睡眠時無呼吸症候群1

睡眠によって、機能のおおくが低下または小休止することになります。大脳機能によって、意識、知覚、意志などの消失がある。呼吸は少なくなり深くなります。通常女性のおこなう「胸式呼吸」になり、脈拍がへり、血圧は低下します。さらには、酸化作用がさがり、炭酸ガスが少なくなります。眼は、上外回転、瞳孔縮小します。腱反射低下、外分泌腺(涙・鼻・唾)の機能低下があります。しかし消化管・腎泌尿器系はやすみません。筋緊張低下しますが、肛門括約筋・膀胱括約筋などは、緊張を保持します。


 睡眠時にともなう変化をいろいろとあげました。機能低下があることはたしかなので、どこから病気とみるか判断に苦しむことがあります。
 睡眠中の無呼吸については、保険診療の上でも活用できることがありますが、それぞれの医療機関で異なることがあります。ここでは「あおぞら診療所いまい」(耳鼻咽喉科・アレルギー科)がおこなっている手順を紹介いたします。

@これまでの経過把握
A鼻・咽喉の診察
B赤血球550万以上の方急ぐ
C睡眠中の呼吸把握のため、「携帯型簡易検査器(スマートウオッチほか6種あり)」をわたし、一晩装着してもらう。保険適応。
D持続陽圧呼吸療法(CPAP− continuous positive airway pressure)。前項の検査で「無呼吸低呼吸指数40以上」適用。または、指数20以上でも、重篤な訴えあれば適用。
Eどのくらい継続するか、いつ離脱できるか。


 月1回診察。血中酸素濃度測定。年2回スマートウオッチによる睡眠時呼吸チェックなど行う。7年間30人かかわったがひとり離脱。なかなか難しい。
(協力:フィリップス・レスピロニクス)

 

 河原田 和夫
 長野市 あおぞら診療所いまい

夏に多い結膜炎について

結膜炎の一番多い季節は夏です。その理由は、スポーツや農作業などで汗やホコリが目に入ったりして目をこする機会が多いことと、高温多湿で病原体が増殖しやすい自然環境になるためです。病原体のついた手で、目をこすったり触ったりすることで高率にうつりますので、その予防法は、できるだけ自分の目に触らないようにすることです。特に、よごれた手で目に触らないでください。農作業などで手が汚くなった時は、石鹸で手をよく洗うまでは、絶対に目に触らないようにしましょう。朝、目が開かないほどメヤニや涙が多く出ている時は、すぐに眼科を受診してください。結膜炎になるとメヤニや涙の中に大量の病原体が存在しますので、他人にうつさない意味でも、メヤニや涙が多い時には、自分専用のタオルや洗面器とし、入浴は最後に入りましょう。

 夏は手が汚れやすいのでコンタクトレンズのトラブルが多いです。夏は、特によく石鹸で手を洗ってから、コンタクトの出し入れをして下さい。また、多くの人の手が触るもの(ドアのノブや電車の吊革など)に手で触った時は、その手ですぐに目をこすったり触ったりしないようにしましょう。できるだけ、不用意に目に触らない生活習慣を身につけましょう。

 プールに入ってはいけない目の症状

 結膜炎等でプールに入ってはいけない目の症状は、第一に、朝、目があけられないほど、メヤニや涙が多く出ている時です。前日に眼科検診があり、異常なしと言われていてもプールに入れません。学校や保育・幼稚園の眼科検診は、プールに入ってよいかを診るものでもありますが、急性結膜炎など突然に出てくる疾患に対してはあまり効果がありません。しかし、慢性結膜炎などには有効で、プールに入るかなり前に、しっかり治療しておく必要があります。朝、メヤニが少し出ていても、普通に目があき、その他の症状もなければ、その日、プールに入ってもよいです。翌日、悪化するようであれば、眼科を受診してください。悪化しないようであれば、2〜3日は様子をみながらプールに入ってもよいと考えます。

 カユミと眼痛は、それらが強くて我慢できないほどであれば、その日はプールに入らず、眼科を受診してください。アレルギー性結膜炎等の眼疾患があっても必ずしもプールに入れないわけではありませんが、医師からプールに入ってよいと言われても、プールに入ると明らかに症状が悪化するようであれば、しばらくプールを中止して、次回の眼科受診時に、そのことをお話してください。多少、白目の赤み(結膜充血や出血など)があっても、その他の症状が全くなければ、その日、プールに入ってもよいです。2〜3日は様子をみて改善しなければ、眼科を受診してください。

 症状が全くなくなれば翌日にはプールに入れますが、プール熱(咽頭結膜熱)やはやり目(流行性角結膜炎)では、一見、症状がなくなっても、しばらくプールに入らないほうがよい場合もありますので、医師の指示に従ってください。 

多田 博之

 (佐久市 博愛眼科クリニック)
 

アルコールで失敗しないために 〜 夏だ!ビールだ!ビヤガーデンだ!!〜

暑い夏、乾いた喉に一気に流し込んだビールはうまい。一方、飲酒運転による悲惨な事故や酒気帯び運転により、人生棒に振ってしまったというようなニュースが後を絶たない。飲みに行く前に飲酒運転しようと思う人は少ない。飲酒により理性や判断力が霧散してしまう故にハンドルを握ってしまうのである。

 この忌まわしい(?)アルコールを我々人類が好んで飲むのは、主に多幸感、解放感、生きる喜びが得られ(スペインではワインをキリストの血、フランスでは命の水と呼ぶ)、且つビールでは口渇が改善されるからである。しかし、影の部分もあり、それらを理解した上で、人類最古そして最高の嗜好品を楽しんでいただきたい。

1.健康面:飲みすぎるとアルコール性の肝硬変や膵炎、脳症(歩行などの運動の障害が多い)などになる。どの疾患になるかは個人差がある。日本人の男性の適量は日本酒3合、ウイスキーダブル3杯、ワインならグラス3杯、焼酎2合、ビール大瓶3本以下である。女性はその50〜70%が限界である。自分の健康を害さない酒量を把握しておくようにする。
 毎日晩酌する人は2日、48時間連続の休肝日を設けると劇的に肝機能が改善し、さまざまな臓器障害を防ぐことが可能である。

症例:35歳、独身男性。酒だけが楽しみで毎日、日本酒5〜7合の飲酒。AST159、ALT89、γGTP779、週2日の休肝日を指示。1ヶ月後AST29、ALT21、γGTP199に改善した。読者もトライしてみるとその効果を体験出来よう。

 急性アルコール中毒、いわゆる一気飲みによる障害である。最近では入学時にその危険性につき指導、禁止する大学が増加し、死者は減少した。しかし、呼吸抑制や昏睡それに続き吐物による窒息や錯乱など、救急外来の4月の見慣れた光景である。ゆっくり味わうのが飲酒の王道であり、最も安全な飲み方である。
2.社会面:個人が正常な判断力や運動能力が維持不可能となる酒量を知っておく。すなわち、某大学学長のように階段から足を踏み外し頚椎損傷し死亡するというような事故を防止し、且つ反社会的な事件を引き起こさないようにする。

日本は飲酒に対し世界的に超許容文化圏であった。酒の上での行動はほとんど許され、社員旅行などで気難しい上司が飲むほどに野人になる、ハイになって女性の肌に触れるなど以前は案外人間らしいと好感度がアップした。しかし、飲酒マナーもグローバル化が進み、ある国際会議に酩酊状態で出席した日本の大臣が国内外で非難されたのは記憶に新しい。

 自らの判断力や道徳律の破綻する限界以上の量を飲まないことが肝要である。臨界点が近づいたら、帰宅するか、アルコールをウーロン茶やジュース、水に切り替え酔ったふりをして酔いを醒ますようにするテクニックを身につけると良い。

「酒は飲むべし。百薬の長。」とするのか、留置場に入る「気違い水」にするのかは飲むあるいは飲まれる人次第である。

宜保 行雄
(松本市 宜保消化器科内科クリニック)

アレルギーをめぐる誤解はなかなか消えない(1)

非ステロイド系抗炎症外用剤の危険性

 以前に買い求め家に残っている塗り薬の成分表示を調べてみてください。<ブフェキサマク>という記載があれば廃棄処分にすることをおすすめします。湿疹、おむつかぶれ、虫刺されなどの治療に使う塗り薬として1970年代から医師によって処方、また薬局で販売されてきましたが、近年この薬を使うことによって重症の接触皮膚炎(かぶれ)をおこす恐れがあることが報告されていました。


 欧州医薬品庁の委員会が今年4月、非ステロイド系抗炎症外用剤ブフェキサマクの販売許可を取りやめるよう勧告したのを受けて、わが国でも慌てて販売中止にすることを製造販売各社が決めたところです。販売中止にはなりましたが、家庭に眠っている塗り薬の回収や、使用しないようマスコミで告知をする予定はないそうです。本稿を読んだ方はこの機会に点検し、もし見つけたら廃棄しましょう。


 医師からアンダーム(商品名)などのブフェキサマク製剤を処方された方は、かかりつけ医でご相談ください。来年3月には医師が処方することもできなくなる見込みです。
 ステロイドの塗り薬は、専門医の指示にもとづいて適正に使用すれば安全性が高いものなのですが、世間ではステロイドを毛嫌いする一方で、 “非ステロイドは安心だという誤解”が未だに残っています。これを機会に認識を改めていただくことを願っております。

あなたのじんましんは食事とは関係がありません

 特定の食物によって蕁麻疹が出る頻度が多いのは乳児期から幼児期前半にかけてです。幼児期後半から成人においては、急性蕁麻疹の原因として一番多いのが、風邪や胃腸炎などウイルス感染に関連したものであって、その場合、食物アレルギーは関与していません。


今、自分の身におきている蕁麻疹が、食物とは関係がないと判断する指標として、蕁麻疹の持続日数がわかりやすいでしょう。乳児でみられるように特定の食物によって蕁麻疹がおきた場合は、長くても12時間以内に発疹は消えてしまい、翌日以降はみられません。一方、学童や成人でみられるウイルス感染が関与した蕁麻疹では、体内でウイルスが活動している数日間はくりかえしみられます。
 世間では、“蕁麻疹がくりかえし出るから何か食事が合わないのではないか”と思いがちですが、これは間違いです。正しくは、蕁麻疹が2日以上にわたって出没するので、食事は99%関係していないということです。


 しかし、あなたの蕁麻疹は食物によるものではなくウイルス感染によるものですよと診察室で説明をした直後に「何か食べてはいけないものはありますか?」と聞き返す患者さんは結構いるものです。そして、これを読んだあなたも数日後には、蕁麻疹といえば食事が原因だという考えに戻ってしまっているのではないですか?

蓑島 宗夫

(松本市 みのしまクリニック)

トラウマって何のこと

外来語のなかで一番広く使われている言葉は、「ストレス」であるといわれます。このところ、ストレスの他にトラウマという言葉もよく使われるようになりました。この言葉が日本で有名になったのは、神戸の震災やサリン事件等の精神的後遺症が問題になった際に、外傷後ストレス障害(ポストトラウマティックストレスディスオーダー、PTSD)という診断名が語られるようになってからです。 

 そもそもPTSDはベトナム戦争からの帰還兵にみられた症状の観察と、いささかの政治的背景もあって1980年にアメリカで公にされた「診断と統計のためのマニュアル第3版(DSM-III)」に採用された診断名なのです。ちょっと専門的になるのですが、DSM-IIIでは、病因論や疾患単位論などの議論は、いわば棚上げにされました。精神疾患の病因はよくわかっていないものが多く、また一つの疾患の輪郭も不明確だからです。

 ところがPTSDのみは、その定義のなかに「外傷的事件」という「病因」が含まれており、DSM-IIIの中で鬼子のような存在であることは当初から問題になっていました。そのことはともかく、主な症状としては、その事件を思い出したくないのに思い出してしまう(フラッシュバック)、悪夢にうなされる、神経過敏、心的外傷を受けた際と類似あるいは同一の状況を避ける、等があげられます。「外傷的事件」の定義は「生命を脅かされるかそれを目撃すること」となっています。しかし、このような定義にあてはまらない「事件」でもトラウマになる可能性があり、PTSDにあてはまらないトラウマ反応もあるといわれています。

 上に述べたトラウマ反応は、1回か多くても数回の「外傷的事件」によるものであり、児童虐待のように、「外傷的事件」が長期間、反復された結果としておこる精神的後遺症に関しては、少なくとも外傷を病因論の中心に据えた診断名は定まっていません。いくつか提唱されている診断名の中で、最も有名なものはハーマンによる複雑性外傷後ストレス障害ですが、DSM-IIIや1994年に改訂された第4版のDSM-IV にもこれは採用されていません。今後、ハーマンの考え方はDSMにとりいれられていく可能性があります。

 ハーマンは、複雑性外傷後ストレス障害の中核は「無力化と他者からの離断」であるといっています。いわゆる多重人格(解離性人格障害)や対人関係の極端な不安定さを特徴とする境界性人格障害、またアルコール依存症や薬物依存症などの嗜癖行動を示す人には、成長期に反復された外傷体験をもつ人が多いようです。   

加藤 信
(松本市 かとうメンタルクリニック)

肛門科医の独り言

 いまどき流行のツイッターと思ってください。皆様と私は2008年12月のこのサイトを通じて、すでに〈シリ合い〉の仲となっております。むろん直接お尻を診せあってのシリ合いではありませんが、すでにまったくの他人でもありません。私はこういうつながりを大切にしたいと思います。このように縁あって〈シリ合い〉となったからには、私は皆様の悩みに責任をもちたいと思います。 レポートを読まれ、ハハハと笑っていただき、ストレスをふきとばしてくだされば、すくなくとも便秘の予防にはなるでしょう。

たまにスナックなどに行き、職業が医者だとわかると、ホステスの10人が10人「婦人科でしょう」といいます。きわどい話をする医者がみんな婦人科ということでは、 婦人科医が気の毒になります。婦人科が軟派で外科だから硬派とはかぎらないですよね。しかし婦人科のご近所にあたる肛門科となると、何か言いにくいものがあります。

「それじゃ、先生、何が専門ですの?」と改めて聞かれると、まことに弱いものです。「肛門科!!」では、どうも色気がなく、ムードをぶちこわしてしまいます。そのせいで肛門専門医は少ないのではないでしょうか。医学界全般も心臓や脳手術、臓器移植にいそがしく、「尻の面倒までみきれないよ。」です。大学の講義でも痔の話はほとんどありませんし、臨床講義で患者供賢はまずできないでしょう。まさか親にも見せない秘所を学生諸君の前にさらすなど、 肛門科の私でもできるものではありません。

 胃や子宮、お乳のない人はいても肛門のない人は一人もいないのです。肛門はたとえ人工肛門であっても、 一人につき1個はないと具合がわるい。これに比べれば、女性だけが所有する例のものなど生命の維持とは直接関係なく、だから年頃になって鎖陰にきづくということもありうることですが、鎖肛はただちに穴をあけないと死につながります。 こんなに大切な肛門なのに、 これほど粗末にされ軽視されている所もまた少ないものです。どうも人間は“穴”の話を恥ずかしがり、おへそより下の話は一般にビロウな話、エッチな話として、さげすまされています。毎日やっかいになっているくせに、そんなもの持っていませんよ。などという顔をしたがる人が多いようです。 ビロウな話、結構。エッチな話、結構。人間だもの。 その点、うちの入院患者さん達はえらい。 朝おきたら「おはよう」のかわりに「おい、出たか」があいさつになっております。

 肛門専門医にいわせると、肛門は身体の中心です。なぜなら肛門に故障があっては、シリの座った仕事もできないし、フンばりがきかない。その人間の生活が根底からおびやかされることになります。尻に火がつくとは、このことだと思います。
 たかが尻の病気というなかれ。痔もちの社長がカンシャクをおこせば、 その害は従業員全員におよぶ。医者に行くのは恥ずかしい。 おびただしい数の痔の家庭薬に費やされる金額に加え、 作業能率の低下など金に換算するなら、ものすごい数字になると思います。
 だから会社の経営をたてなおすためには、痔ばかりでなく健診をうけ、あらゆる病を未然に防ぐのが一番でしょう。と教訓をたれたところでおわりにします。  

渡辺 豊昭
(松本市 渡辺肛門科医院)

腰痛

腰痛。それは人類が二足歩行を始めたときから、宿命となった症状でしょう。脊椎動物は、頭蓋骨の下に、頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙椎5個、尾椎3〜5個(仙椎、尾椎は1塊となっている)を持っており、4足歩行の動物はそれぞれの間に圧がかかることはほとんど無いのに対し、2足歩行の人間は、その椎体より上の体重を支えなければならない宿命にあるからといわれています。
 腰痛は産業化社会では一般的な症状であり、イギリスの研究では毎年人口の2%が腰痛の医療を求めており、一生の間に70%の男性が腰痛のエピソードがあることが示されています。さらに付け加える事実は、アメリカ合衆国では年間250万人の労働者が障害を受ける。毎年全ての従業員の2%に腰部障害がある。毎年100人の労働者が平均28.6日を浪費する(これによると毎年アメリカ合衆国では年間1700万労働日に上る)。イギリスでは腰部障害のために毎年25人に一人が仕事を変える(これらは1980年代頃の論文からの引用です。現在でも、増えることはあっても減ることは無いと考えられるでしょう)。
 職業性腰痛の原因の3分の1が作業中に起こり、重量物を挙上したり腰を捻ったりした事故の結果であり、別の3分の1もやはり作業中に起こるが滑ったり転倒した結果であり最後の3分の1が作業環境以外の自然に起こったものとされています。
腰痛が産業界に与える重大な影響は、腰部愁訴により6ヶ月以上仕事を休んでいる労働者が生産現場へ復帰できる確率はたった50%という事実です。

腰痛患者の診察にあたって
 さて、医師が腰痛の患者さんを診察するに当たり、その病歴を聴取後に診断を下せる確率は80%であり、診察することによりその確率は10%改善し、特殊で高価な検査を指示することによりさらに5%改善する。病歴や診察、検査を見直した後にまだ診断に自信が持てないならば、元に戻って病歴を聴きなおしなさい。正確な病歴を僅か数分で聞き出すことにより、高価な検査にかかる数千ドルを節約することができる。と教科書に書かれています。その教科書は、『良い獣医になることがどんなに難しい事かわかりますか?』と結ばれています。
 診察室での問診に使っているテンプレートには、ギックリ腰の既往がありますか?夜間痛みで目が覚めることがありますか?立ち座りの動作で痛みがありますか?長く歩いていて途中で立ち止まりたくなることがありますか?この痛みで日常生活が不自由ですか?それとも何とかやっていけますか?と、これくらいのお話を、お伺いするようにしてあります。これら全てを正確に聴き取ることができれば、素人でも患者さんがどのくらいの症状にあるかが見当つくでしょう。

腰痛治療の順序
 腰痛治療の順序は、安静(安静臥床、装具、体重減少、仕事の調節)、投薬(鎮痛剤、抗炎症剤、筋弛緩薬)、温度変化(温熱と冷熱)、運動(屈曲、伸展、等速度運動)、その他(針治療、経皮的電気刺激、リラクゼーション療法)、時間。とされています。そして、患者さんがこれらの保存療法を行ってきたならば、それらを再度行うよう指示することは無意味であるということです。いったん適当な保存療法が失敗したならば、手術を考えなければなりません。さらに膀胱直腸障害や進行性の神経障害の病変があれば直ちに手術を考えるべきであるということも忘れてはなりません。
 しかしながら保存療法の最後に掲げられた項目は時間です。症状や疾患が自然経過で軽快するだけの十分な時間が経過したか、自然経過が過ぎるまで、患者さんを手術室に急がせる必要はありません。
 患者さんを手術室に急がせる必要が無いことは前述の労働者の社会復帰の観点と矛盾しています。現在は保存療法と手術療法の間に、硬膜外ブロック、神経根ブロックという麻酔治療も有効であり、手術治療も微細侵襲手術が開発され、患者さんの負担(手術の範囲、入院日数や経済的問題)も軽減されています。大切なことは、手術しなくて良い患者さんを手術してはいけない。また手術が必要な患者さんをむやみに待たせてはいけないと言うことではないでしょうか? 

花岡 徹
(山辺温泉花岡整形外科医院)
 

補聴器

 今回のテーマは補聴器です。補聴器を通して日本社会の健康を考えてみます。
 補聴器(ほちょうき)は、聴覚障害者の聞き取りを補助する補装具です。もう少し耳に優しく表現しますと、補聴器は聴力そのものの改善はできませんが、加齢や様々な原因で衰えた聞こえを補い、「会話の聞き取り」をサポートする道具です。もっと簡単に言うと、補聴器は、今より聞こえを良くするために、音を大きくする器械です。
 補聴器の構造は@マイクロホンA増幅器B音量調整器C出力制限装置DイヤホンD電池(電源)で構成されたものが基本形です。基本構造は、運動会や講堂で使われる拡声器と同じです。ラジオやアンプを組み立てた経験のある人なら簡単に制作できます。

 音を大きくする機械は、簡単に制作できますが、様々な難聴に有効な補聴器を制作することは容易ではありません。現在、販売されている補聴器は増幅器の種類によりアナログ型とデジタル型に大別されます。デジタル補聴器の開発で補聴効果は大きく改善され、更に補聴器の装用効果が期待できない難聴には、人工内耳、人工中耳、人工内耳+補聴器などが開発され医療として提供されています。
 難聴を天命として諦めてしまう時代は終わりつつあると言えますが、日本社会の現状は、補聴器の普及率ひとつとってみても十分とは言えません。社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の調べでは、補聴器を必要とする難聴者は約600万人に上るようです。これに対して2008年度の補聴器出荷台数は、約46万台です。一人で複数台装用又は短期の買い換えなど考えると、普及率は極めて低いと思われます。

 なぜ普及率が低いのかを考えてみます。まず第一に、聴覚障害を持つ社会的弱者には値段が高過ぎます。更に障害者福祉制度が支援する難聴レベルが高過ぎます。欧米の支援レベルが40dB程度に対して日本では70dB(60dB以上が高度難聴)以上です。第二に障害者のための社会インフラ整備が不十分なため、補聴器を装用しても気軽に外出できないことが補聴器の購入を阻害しています。難聴者にとっては全ての車が電気自動車に見えます。第三に聴覚障害者個人の責任と負担に任され過ぎです。補聴器の費用負担だけでなく、装用に伴う身体的・精神的負担は家族や周囲の人達にもなかなか理解されないでいます。便益と負担のバランスを考えると買う気が起きないのでしょう。

 ところで、人類の他種生物にはない際立った特徴のひとつに音声言語の獲得があります。この言語活動が脳を含めた聴覚の飛躍的発達を促し、人類の知性や社会性を育んできました。このことから、迅速かつ的確なコミュニケーションを可能にする人の聴覚は社会的共通資本と言っても過言ではありません。しからば、難聴に起因するコミュニケーション障害を克服する補聴器は公共財であるべきです。「一人の耳は皆のために、皆の耳は一人のために。」をスローガンとする耳協同組合が出来れば、聴覚障害がもたらす経済損失(米国ではGDPの2〜3%との報告)をかなり抑制できそうです。

茅野市 耳鼻咽喉科三田医院
三田 温
 

口臭の原因

 口臭を主訴にして歯科医療機関を訪れる方がいます。
一口に口臭といってもその原因はさまざまで、大きく分けると虫歯や歯周病(歯槽膿漏)、舌苔(舌につく汚れ)、唾液の減少など口の中に原因がある口臭、糖尿病や便秘など全身的疾患が原因で起こる口臭、ニオイのきつい食べ物を食べたりタバコを吸ったりしたときに一時的に起こる口臭などに分類できます。
 また、自臭症といって実際にはほとんど臭っていないのに自分の口臭を気にしてしまう症状もあります。
 虫歯で穴が空いていると中に食べ物が詰まったままになりやすくそれらが腐敗して臭いの原因になります。歯周病では歯茎から血や膿が出るようになり、歯と歯茎の境目は細菌の絶好の住みかになります。口の中の細菌は様々な臭い物質を出しますから虫歯や歯周病がある場合は治療を行うことが先決です。舌苔も細菌ですから舌苔が多いと口臭の原因になります。近頃では舌苔ブラシや舌ベラなど歯ブラシと同じように舌をお掃除する道具も売られていますから口の中のお手入れが口臭予防には欠かせません。

 唾液には汚れを洗い流し、唾液性分の中には細菌が増えないようにする抗菌作用物質もありますから唾液が減少すると結果的に口の中が不潔になりやすく口臭の原因になります。唾液が減少する原因にはシェーグレン症候群やバセドウ氏病といった病気の他、抗鬱剤(抗うつ剤)、鎮痛剤、利尿剤、抗パーキンソン剤、降圧剤などの多くの薬物の副作用として唾液分泌の低下があります。
 口の中が原因でない口臭もありますが便秘なども口臭の原因になることがあります。腸の中の細菌も善玉菌が多いと問題ありませんが便秘などで悪玉菌が増えると臭い物質を多く出しますから規則正しい食生活は口臭予防の第1歩です。

 自臭症という症状も近年増えているような気がします。口臭を訴えてくる患者さんですが自臭症の方の口の中は例外なくきれいで、虫歯や歯周病はおろか歯の汚れはついていない方がほとんどです。過度の潔癖症やストレス、過去に口が臭いといわれた心のトラウマなどが原因で心因性口臭・口臭恐怖症・精神的口臭ともいわれ、心理的、精神的なことの原因が大半です。口臭はないことを説明して安心してお帰りになればよいですが納得がいかず何軒もの歯科医院や病院めぐりをしてしまう方もいて対応が難しいケースもあります。
 むろん病的な口臭は治療しなければいけませんが、人間も生き物ですから無臭、無菌の人はいません。ブレスケアグッズ、除菌抗菌グッズが売れる時代ですが、多少の体臭も許容できるような心のゆとりを持てる社会が大切だと思いますがいかがでしょう。

布山歯科医院
布山徹

腎不全の治療と寿命

治療法について
 腎不全になると、「透析」という言葉が浮かぶと思います。最近は、生活習慣病である糖尿病から、腎不全・透析になることが多く、国民病のひとつになりました。毎年3万人が新たに透析患者になり、2万人が亡くなるため、約1万人が純増している計算になり、現在28万人程度に達しており、医療費も1兆4000億円を超えています。
 ところで、腎不全の治療には、選択肢が4つあります。まず、@人工透析(皆さんが透析と呼ぶもので、ダイアライザーという特殊な膜を使って、腎不全により体内に蓄積した老廃物を「拡散」という方法で除去します)。A腹膜透析(手術で、特殊なチューブを自分のお腹の中に入れ、そこに透析液を出し入れし、老廃物を排出します)。B人工透析ろ過(腎臓本来の「ろ過」機能を付帯させ、より高度の透析を行う)。C腎移植。です。

延命効果の違い・特色
 では、どの治療法が優れているのでしょうか。それぞれの治療法の違いですが、簡単に言うと、透析の能力の差=寿命・延命効果の差と言えます。正常な腎臓の機能を100%と考えた時、各治療方法を腎機能に換算すると、Cの腎移植が約50%、Bの人工透析ろ過が約25%、@の人工透析が約8%、Aの腹膜透析が約6%と計算できます。当然、高いほうが、治療効果が高く、合併症の発生も低いため、延命効果は高くなります。しかし、現実の透析治療の選択は、その効果や理論通りにはなされていません。延命効果の最も高いCの腎移植は中々増えないのが、まさに象徴的で、これは外国に比べ献腎が少ないことが原因です。Bの透析ろ過に関しては、現在、保険適応が一部にしかされていないことと、またその治療に必要な機材の値段が非常に高く、その最新治療は赤字治療になることが普及の障害になっています。必然的に、治療効果が劣る@の人工透析やAの腹膜透析が選択されることが多くなります。そして、もっとも大きな問題は、患者自身が、治療法に関し、医師任せで、不勉強であり、それをいいことに、医師も十分な情報提供を怠っていることです。

最 後に
 透析医療は、社会復帰(勤労し、社会に貢献する)を前提で、延命のための治療ではありません。3割自己負担が原則の中で、透析だけは、自己負担限度額が、1万円となっており( ただし、診療のある月の標準報酬月額が53万円以上である70歳未満の被保険者またはその被扶養者については、自己負担限度額は2万円)、それも市町村から(手数料300円を除き)補助されるため、実質は300円の負担で受けられます。さらに障害者扱いになるため、税負担の軽減や年金などの加算もあります。不幸にして透析を受けることになっても、落胆するのではなく、保険料を払っている方に恩返しする気持ちを持って、社会復帰してもらいたいものです。

 

南長野クリニック

山崎 徹

いびき

  いびきはどちらかといえば男性の専売特許で、女性のいびきはホルモンの関係で更年期以降におきやすく無呼吸になることは少ないといわれています。

 「いびき症」は大きく3つに分けられます。@単純性いびき症A上気道抵抗症候群B睡眠時無呼吸症候群です。これら3つに共通しているのは顔の骨格です。顔が面長で奥行きのない人はのどの空気が通るところが狭いのでいびきをかきやすくなります。さらに肥満になるといびきが増強され悪化します。

 単純性いびき症はいびきも軽く昼間の眠気も無呼吸もありません。1600万人存在するといわれています。
 上気道抵抗症候群は無呼吸はありませんが、いびきをかくのにのどが潰れるほど強い呼吸をします。また昼間極度に眠くなったり、会議中に居眠りをしたり、運転中に急に睡魔に襲われたりします。実際に電車事故・自動車事故・作業事故などが起きています。

 睡眠時無呼吸症候群はその名の通り眠っている間に呼吸が一時的に止まり(長い人で1分間程度)、また呼吸を始めるタイプで、家族は心配します。3つのタイプともに寝ている間に自覚はなく、無呼吸は口蓋垂(のどチンコ)が舌の付け根の裏側の狭いところに吸い込まれて詰まります。自分自身は何も苦しいことはありませんが、身体のほうは苦しくて歯を食いしばったり、脈がドキドキしたり、血圧が上がったり、さらに酸素不足で顔が真っ青になったりします。200万人いるといわれています。これらの診断には終夜睡眠ポリグラフ(PSG)を使います。

 PSGは睡眠中に睡眠脳波・呼吸・心電図・足の痙れんなどを検査します。上気道抵抗症候群は呼吸が正常でも睡眠脳波で数秒間の微小覚醒が見られます。つまり本人は気がついていなくても目が覚めた状態になることで、ノンレム睡眠(深い睡眠・脳の休息)が浅くなり、レム睡眠(浅い睡眠・記憶の整理)も少なくなります。無呼吸も微小覚醒数も1時間に10回以下が正常といわれていますが数10回になることもあります。

 検査にはレントゲン検査もあります。頭部X線規格写真(セファログラム)といい、顔を固定して真横から撮影します。ここから顔面軸(難しくなりますので説明は省略します。)を計測します。
 日本人の平均は86.3度±3度でこの角度が小さくなれば、つまり細面になればいびき症になりやすくなります。この顔面軸は生涯変わることがないのでいびきのリスクを推定することが可能です。

 無呼吸の治療にはシーパップ(Cpap)を使います。これは一種の人工呼吸器で睡眠時に鼻にマスクをつけて強制的に空気を肺に送り込みます。口を使わず鼻のみで呼吸することが肝心です。いびきは消えますが同室の人は器械の音が気になるかもしれません。

 マウスピースによる方法もあります。いびき防止のマウスピースをオーラップといいます。上下顎にマウスピースを装着し、やや受け口にした状態で固定します。慣れるのに数日かかります。口蓋垂の長い人は切除が必要になります。症状によってオーラップのみまたは併用することもあります。オーラップは歯科で作成することも可能ですが、いびき症の診断・処置・手術は耳鼻咽喉科・大学病院・いびき外来等の受診が必要です。太っている人はやせる必要がありますが、減量についてはここでは省略します。

  辰野町 鈴木歯科医院 
    院長 鈴木 信光

あなたは大丈夫? バセドウ病のお話

女性歌手Aさんが記者会見で発表した病気の名前で注目を浴びたバセドウ病についてのお話です。バセドウ病は甲状腺で作られるホルモンが血液の中に過剰に分泌される病気のことで、甲状腺機能亢進症とも表現されます。

■甲状腺は首の前方、のどぼとけよりやや下にあり、蝶が羽を広げたような形をした重さわずか10〜20グラム程度の小さな臓器です。健康診断などで首がはれていると言われ当院を受診される方すべてに甲状腺の腫大が認められる訳ではありません。例えば、皮下脂肪が多い方では首がはれたように見えますし、スポーツ選手などでは首の両側にあって耳の後ろから鎖骨に向かって走行する胸鎖乳突筋という筋肉が発達しているため一見甲状腺がはれたように見えてしまうことがあります。

■甲状腺では海藻類、特に昆布などに含まれるヨードを材料にして甲状腺ホルモンを作ります。甲状腺ホルモンは成長や新陳代謝を維持するのに大切で、必要な量を適切に作って血液の中に分泌しています。しかしながら甲状腺はホルモンを作る工場ですからどのくらい作ればいいのか?という判断はできません。ここで登場するのが脳にある脳下垂体です。脳下垂体から甲状腺刺激ホルモンが分泌され血液にのって甲状腺にたどりつき、甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンを分泌するよう命令します。同時に脳下垂体は甲状腺から分泌されるホルモンの量を常に監視しており、甲状腺ホルモンが少ないと速やかに甲状腺刺激ホルモンを分泌し甲状腺にホルモンをもっと作るように指示します。逆にバセドウ病などのように甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状況では甲状腺にホルモンを作ってほしくないので甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑えます。このように甲状腺は優秀な司令官(脳下垂体)のもとで仕事をしているのです。

■バセドウ病で甲状腺ホルモンが必要以上に作られるのは何故でしょうか?バセドウ病の患者さんの血液検査結果を分析すると、甲状腺刺激ホルモンは低値、甲状腺ホルモンが著しく高値というパターンをとります。司令官である脳下垂体は甲状腺に対してホルモンを作るのを止めるよう指示しているのに、甲状腺はそれを無視してホルモンをつくり続ける状態です。実は、バセドウ病の患者さんの血液の中に甲状腺刺激ホルモンとは別の甲状腺を刺激する因子ができてしまうことが原因なのです。

■バセドウ病の症状は動悸、手がふるえる、体重が減る、脈が速い、汗をかく、のどが渇く、食欲が増す、イライラする、目つきが鋭くなる、などがあります。子供の場合は、落ち着きがなくなり、集中力が低下するため、成績が悪くなる場合があります。さらに、トイレに座って立ち上がろうとしたら脚に力が入り難くなったり、あるいは周期性四肢麻痺といって、目覚めると体が動かない金縛りの様な症状を自覚される場合があります。バセドウ病を放置すると命にかかわることもありますので、注意が必要です。

■バセドウ病は治療で治る病気ですので、自覚症状のある方は恐がらずに最寄りの甲状腺専門医を受診してください。

 

日本甲状腺学会認定専門医施設
丸山クリニック
    院長 丸山正幸

婦人科のガン〜お隣さんでも似ていません〜

  女性器の癌は子宮ガンと卵巣ガンが代表です。
他に卵管ガン、膣ガンもありますが、これは本当に珍しいものでめったにお目にかかれません。

 子宮も卵巣も小骨盤内に鎮座ましましている連続した臓器です。
 子宮は一つですが、子宮に出来るガンには頚部ガンと体部ガンと2種類あり、原因も治療法も微妙に異なっております。

 子宮頸ガンは性行為で感染するヒトパピローマウイルス感染が原因です。ありふれたウイルスなのですが、これに感染するとその2〜3割にガンが発症すると考えられております。

 これに対し、体部ガンはホルモン失調が根底にあります。排卵の無い状況、即ち卵胞ホルモンだけが出て、黄体ホルモンが出ないバランスのくずれた環境が長い間続いてゆくと体部ガン発症の素地となります。
 頚部ガンは進行してこないと大した自覚症状はありませんが、体部ガンは早い時期から出血があり早期発見される事が多くあります。但しこのガンは、更年期年齢の頃から多くなりますので、不正出血を、この時期に多い生理的な不規則な月経と考えて病医院を受診しないと、早期発見には結びつきません。

 さて、卵巣ガンには、いろいろな種類がありますが、進行の早いものも多く、自覚症状、主に腹水によるお腹の膨満感が出てくる頃には、すでに進行していることが多いものです。婦人科検診に超音波検査が併用されれば卵巣ガンの早期発見ができるのではないかと検討されております。

 以上、婦人科ガンについて書きました。
 早期発見が出来れば、いずれも比較的簡単に完治いたしますので婦人科受診を躊躇しないようにいたしましょう。欧米では、セックスの経験が始まると女性の訪れる家庭医は、それまでの小児科医や内科医から婦人科医に替わるそうです。

 最期に、子宮頸ガンは、おたふく風邪やインフルエンザなどと同じようにウイルス感染です。従いまして、何歳で接種するかが議論されてはおりますが、ワクチン(HPVワクチン)で予防できる時代がすぐそこまで来ております。

 

三浦産婦人科医院
三浦 秀輔

たかがみずむし されどみずむし

暑い夏の到来、足がかゆく、ブツブツ、ジクジクなんてことありませんか。それってみずむしかもしれません。


1.原因
 ところでみずむしの原因は、何となく虫、どんな虫?なんて思ってしまいますが、実は虫ではないんです。植物、白癬菌というカビの一種なのです。皮膚の最も表面の部分を角質層といいますが、カビはこの部分を土壌にして繁殖します。つまり角質部分の感染症です。


2.症状
 はじめの症状は、水ぶくれ、皮むけ、ただれなどです。足のうら、趾(あしゆび)の間にみられます。つまり水疱型、趾間型。これは一般によく知られている夏の症状ですが、冬には放っておいても消えますので、これを何年かくり返しているうちに、思いがけない次なるステージが待っています。足の裏がごわごわと厚くなり、特にかかとがひび割れて痛みを伴ってきます。新陳代謝が低下して乾燥する冬の季節、皮膚科の診察室はこのような患者さんが多くなります。更に次のステージは爪が白くあるいは黄色ににごり、進むにつれて厚くなり、ボロボロとかけてくるようになります。これが爪みずむし(爪白癬)です。この白癬菌の感染は足だけではありません。からだのいたるところに感染します。しらくも(頭部白癬)、たむし(体部白癬)、いんきんたむし(股部白癬)も古い俗名ですが、白癬菌の感染症です。また、手も足と同様爪白癬にまでおよぶ症状の出ることがあります。


3.合併症
 ここで注意しておきたいことは、角質増殖型、爪白癬へと進んだいわば重症型の場合、基礎疾患として糖尿病を持っていることがあります。爪をみて糖尿病が見つかることは医療の現場では珍しいことではありません。もう一点、みずむしのジクジク部分より細菌感染を起こすことがあります。紅く腫れて痛みが出てきたら、すぐ病院を受診しましょう。


4.感染場所
さて、白癬菌はどこからうつるのでしょうか。家族の中にみずむしの方がいらっしゃる場合、お風呂のマット、トイレのスリッパ等素足での共用が要注意です。お風呂や洗濯の水は問題ありません。家庭の外ですと、温泉をはじめとする共同浴場、プール、スポーツジムが感染場所となります。また柔道、空手道場はよくうつる場所です。


5.診断
 次に診断です。特徴的な症状を認めること。そして何よりも大切なことは顕微鏡検査です。病変部の皮膚または爪を少し切り取り、特殊な処理をして顕微鏡で確認いたします。水虫に似ている病気がいくつかあるからです。


6.治療法
 最後に治療法です。今は、竹酢、黒酢などと言わなくても、外用薬内服薬ともによく効く薬が何種類かありますからご安心下さい。初期の段階(小水疱型、趾間型)では外用薬を使います。3週間ほどで症状は消えますが、その後1ヶ月ほどは続けた方がよろしいようです。内服薬を1〜2週間服用することもあります。更に角質増殖型、爪白癬には内服薬を使います。前者には1〜2ヶ月、後者は5〜6ヶ月を目安にします。薬に副作用はつきもの、肝機能、腎機能等チェックしながらおこないます。また、様々な理由で内服が不可能の場合があり、外用のみで治療することもあります。
 以上、みずむしについて概要をお話ししました。たかがと侮れないのがみずむしです。

二條皮ふ科クリニック
二條 貞子

記録の効果

 我々の仕事ではカルテをはじめ、レントゲンや模型、各種の検査値や口腔内写真などなど、仕事にまつわる『記録』には様々なものがあります。普段はあまり深く考えずに、当然のように口腔内写真を撮ったりしていますが、こういった積み重ねがいかに我々の仕事の支えになっているのか『記録』を残すことがいかに大切かということを、昨年春から20キロの減量に成功するきっかけとなった『レコーディングダイエット』を通じて実感しました。

自分と相性が良かったレコーディングダイエット

 考えてみると数年前からジムにも通うようにしましたし、色々なダイエット食品、飲料、サプリなどなど試してきましたがあまり効果はありませんでした。そんな時昨年の正月に手にした本で知った『レコーディングダイエット』は自分と相性が良かったのか約3ヶ月程で前述のような効果が得られました。
 約3ヶ月でこれだけ痩せると久しぶりに来院された患者さんはかなり驚かれるようで、まず受付で『先生、お体壊されたんですか?』と(笑)で、
ダイエットした結果と知るや『どうやって?』という展開が必ず。
 もともと、仕事柄ちまちまと(?)した細かい作業や、集めたレコードやCDのリストを作ったりする作業は嫌いではないので手帳が何冊も増えていくのが楽しかったりもします。しばらく続けて行くと、普段気をつけて飲食していたのが『あ〜もうイヤ!』となってちょっと暴飲暴食したりしてしまう時もあるのですが、通常これをきっかけに『あ〜やっちゃった。もうヤ〜メた。』というのが典型的なダイエット挫折のパターンらしいのですが、ここで手元にあるダイエット開始時の記録や今までの経過をみれば、それでもある程度の効果は出ている訳です。これがもの凄く励みになり、『そうだよな、前はこんなに太っていたじゃないか、もう少し頑張ろう!』となります。太っている時の体重計の数値というのは見たくないもののベスト3に入っていましたが、まず現実を見ない事にははじまりません。自己破産する人の大半が自分の借金の総額を把握していないのと似ているかも知れません。

院内の空気が少し優しくなるような気が…

 さて、こういった『記録』というものは自分にだけ意味をもつのでは無く、長くおつきあいしている患者さんにとっても、凹みがちな時に『これだけ腫れていた歯肉がこんなに綺麗になった。』というのは何にもましての励みになると思います。他にも3歳から通院していた子は10年もすれば中学生、初診時の顔写真をモニターに映し出すと本人は何とも照れくさそうな顔をしたり、お母さんは『そうねぇ、今は憎らしい言ばっかりいってるけど可愛かったのよねぇ』みたいな遠い目をして(?)院内の空気が少し優しくなるような気がするのも記録の効果の一つかも知れません。

 伊佐津 和朗
(いさつ歯科医院)

「子どもの心」相談の診療から

  少子化社会に突入しまして、地域に赤ちゃんの泣き声が途絶え、子どもたちが戸外で群がって遊ぶ様子が見られなくなって久しいです。小児科学会は乳幼児のテレビやビデオの長時間視聴が発達する脳に対する影響についての声明文を発表しました。小中高生のインタ−ネット、ゲーム、携帯メールが視力や昼夜逆転の生活など健康ばかりでなく、生の人間の体験や想像力を働かせる機会をうばっています。子どもたちを取り巻く環境はますます悪化の一途をたどっています。国連は過去二度も日本政府に「極度に競争的な教育制度のストレスよる発達障害、余暇やスポ−ツ活動の欠如、不登校数が膨大である」ことを指摘勧告してきました。
 わたしたちは、一般診療の傍ら5年前から「子どもの心」相談の診療を開始しました。取りあえず子どもたちが元気で明るい生活を過ごせるよう微力を尽くせたらという想いでした。

思春期外来で
 図1は日本の小中学校の不登校数です。現在約13万人いて、90年より急増し3倍を示してます。わたしたちが5年間で診た92例のうち、年齢分布は9〜17歳の思春期78例が一番多かったです(図2)。半数以上が不登校でした(図3)。

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図1 我が国の不登校の発現頻度


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図2「子どもの心」の受診者年齢分布

3.jpg 私たちの78症例で不登校の占める割合は56%です。

不登校と不登校傾向は56.4%(44例)です。

図3 不登校の占める割合


  初診時症状は頭痛、腹痛、が多かったです。次いで朝起きられない、だるい、食欲不振など不定症状です。診察、検査では異常がありません。表1は不登校44例の背景疾患です。適応障害が多く、友人関係やいじめに悩むのが特筆すべきことがらでした。元気な女の子が男子から「死ね、うざい、きもい」といわれ、黒板や携帯サイトに書き込まれます。それだけで学校でまったく孤立し、不登校やうつになるのです。
 いじめは陰湿で教師や親の前では見えない、交代で一人を執拗に繰り返す、メデイアが駆使されます。それで大人は何故そんなことで病気になるのかというのです。次は身体表現性障害でいわゆる心身症です。検査、投薬で改善します。精神疾患はうつ、不安障害は全般性不安障害、強迫障害、パニック障害です。

支援はどうする?
 まず子どもの心をていねいに聞き取ることから始まります。それから親御さんからも学校や家庭の様子など教えていただきます。症状やお話から子どもが訴えていることは何かを考えます。
 治療は子どもの自尊感情を高める援助をします。休養が必要であれば充分に心身の休養を図ります。特にいじめ被害者は加害者から守ってあげなければなりません。救出避難させることが大事です。
 不登校は親指導や環境の整備も大切です。学校,中間教室や児童相談所など関連機関と連携をとりたいものです。
 この間にわが子の学校崩壊に悩んだチームの一員が、親の会をたちあげて教師と一緒に現在も活動しています。

 

矢崎なつめ
(松本協立病院 小児科)

たとえ認知症になったとしても

私は飯綱町で開業しております。脳神経外科が専門ですが実質はかかりつけ医として日々の診療を行っております。ただ脳が専門ということもあり、認知症に関わることも多く、飯綱町が県の認知症地域支援体制構築等推進事業のモデル地域として本年3月まで活動したこともあり、認知症の啓発に携わった経験より、この病気の話を少ししたいと思います。

 何か変だと感じたら専門医をお訪ね下さい
 認知症とは、認知機能、わかりやすく言うと物事を判断する能力の障害で、高齢者に多いことから、高齢社会ではその対応が緊急の課題となっています。ただ、最近は若年性認知症が注目されています。18歳以上65歳未満の症状があるものを総称した言い方で、働き盛りの年代でも認知症になり得るということです。
 認知症かどうかのポイントは3点あります。第一は記憶の低下で忘れっぽくなる。第二は認知機能障害で人・場所・時間などの見当がつかなくなる。第三は今までの生活を続けることが難しくなる。また、認知症状は本人よりも周囲の人(家族など)が気づくことがありますが、具体的に言うと、「以前と何かが違うと思うことがあるか」「以前にできていた事で出来なくなった事があるか」「その人らしくなくなった事があるか」といった点が早期発見の手がかりとなります。いずれにしても早目に診断をつける為にも「何か変だ」と感じたら認知症相談医、認知症専門医療機関などを訪ねて下さい。認知症はれっきとした病気です。恥ずかしくもみっともなくもありません。ためらわず早目に相談して下さい。

 異常と思える行動も必ず理由があります
 認知症の原因となる病気は約70種ほどあると言われていますが、代表的なものは次のようなものがあります。
1アルツハイマー型認知症 (50〜60%)
2脳血管性認知症
 (20〜30%)
3レビー小体型認知症
 (10%)
4その他の病気が原因 
 脳血管性認知症は脳梗塞などが原因となるものです。その他の中には頭部外傷、脳腫瘍、薬物中毒、甲状腺機能低下症などがあり、治療で治るものもあり早期の受診がかかせません。
 認知症の主な症状には、主な症状の中核症状と、それに引き続く精神や行動の障害がみられる周辺症状があります。中核症状では様々な認知機能が障害され、記憶や判断力低下、実行機能低下(料理が手順よく作れない)、見当識障害(場所、時間がわからない)、失語(上手く話せない)、失行(動作が適切でない)、失認(見ている物がわからない)などがあります。周辺症状では行動障害(徘徊など)、精神症状(抑うつ、興奮、妄想など)、睡眠障害(昼夜逆転)などがあります。特に周辺症状は介護の上でも大きな問題となりますが、環境の調整、対応の工夫、適切な薬物治療などで改善する可能性が十分にあります。基本的に最も大切なことは、認知症本人の気持ちを理解しようとすることで、異常と思える行動も本人にとっては必ず理由があるということを理解して下さい。ですから周辺症状は何らかの身体疾患、不適切なケアや環境、介護者の過剰な介護負担など多彩な原因が絡み合って起こることもわかって下さい。

 たとえ認知症になったとしても…
 たとえ認知症になったとしても、われわれはその人を病人扱いせず一人の人間としてみること、そして、認知症になっても安心して暮らせ、人生を最後まで全うできるような町を作るためにも、地域のかかりつけ医として働きたいと考えております。

 長崎忠悦
(飯綱町 ながさき医院)

ゴルフ練習後の恐ろしい背胸部痛!

待ちに待ったゴルフ場のオープンです。冬の間にすっかり硬くなった身体をほぐすでもなく、一回の練習にいきなり200球以上打ってはいませんか。

先日52歳のゴルフ暦9年のHC16、飛ばし屋の社長さんが受診して来ました。ここ2週間に8回練習場に通い、日に200から300球を打ち続けたようです。2回目の練習中に左背部にチクッとした感じがしたが、気にせず仕事や練習を続けていました。首筋から左背部の重圧感が続発し、ここ2回の練習時には左背部から胸部にかけて走る痛みを伴い、スウィングや体動で増強しました。ゴルフ仲間に話したところ、「俺にもその経験があるよ。整形外科で診てもらったら第4肋骨の疲労骨折だった。シングルになるには大抵が経験するらしい。レントゲン撮ればすぐ診断がつき、バストバンドでゴルフ続けられたよ。」とアドバイスされ、来院しました。

大柄な体格の方でした。特定肋骨の圧痛はありませんでした。右利きで反対側の左肋間神経痛を訴えましたので、レントゲンを撮ってみました。肋骨骨折は確認できませんでしたが、胸部大動脈の石灰化が微かに認められました。
 問診中、6年程前に会社の健診で糖尿があり、コレステロールと中性脂肪、尿酸が高く、血圧も高いと指摘されたがなんの症状もなく放置していたと言っていました。25年以上も毎日ウイスキー0.5本、タバコ40〜50本吸っていたとも。動脈硬化危険因子が立派に揃っているじゃないですか!
 「あなたは、レントゲン上まだ現れていない肋骨の疲労骨折かもしれないし、過労性の筋肉痛や筋違いかも知れません。しかし念のため心臓・大動脈疾患の専門医の診察を受けてみましょう。」とお話しました。
「なんの疲れや症状もなく、元気にしているが」と少々不満そうでした。
「6年ぶりの健診だと考え、今年も安心してゴルフができるよう受診しましょう」と説得して紹介状を書きました。結果は無症候性の虚血性心疾患(2本の冠動脈狭窄)が確認され、ステント挿入術で事なきを得ました。

 ゴルファーが背胸部痛を訴えるときには、筋肉痛、肉離れ、肋骨や下部頚椎棘突起骨折を考えがちです。しかも肋骨疲労骨折は利き手の反対側第4,5,6,7肋骨に多発します。だからと言って左側の背胸部痛や肋間神経痛のとき、即、肋骨疲労骨折と断じないで下さい。
 胸郭内には常に生命に危険性のある心臓・胸部大動脈疾患、肺癌、縦隔洞癌、時には胸椎や肋骨、胸壁への転移癌なども偶然に発見される事もあり、帯状疱疹の皮膚症状に先行する強烈な神経痛もあります。
 メタボリック症候群や動脈硬化危険因子のある中高年のゴルファーが増えています。健康に留意しながらゴルフを楽しみましょう。

張 洛善
(松本市 あずさ整形外科医院)

多重債務問題

今回の話題は、こういうことも医療の対象となるのか、と思われるような多重債務の問題です。しかし、「夫があちこち借金をして困る。これまで実家からの援助で返済してきたが、もう限界だ」といった相談は、精神科診療所には結構あるのです。

 ご本人は、返せるあてもないのに借金を重ねているように思われますが、借金を繰り返す理由として、ギャンブルへののめりこみ等が考えられます。本人にとって好ましくない結果が生じているにもかかわらず、アルコール等の物質を過剰に摂取することがやめられなかったり、ギャンブル等の行為にのめりこんだりしている状態をアディクション(嗜癖) といいます。借金を繰り返す人は、このようなアディクションに陥っている可能性が高いのです。しかしその理由がはっきりしないからといって対応できないわけではありません。なぜなら、返せるあてもないのに借金を繰り返す人と、そのことでお困りの家族との関係の修正が第一歩となるからです。

 まずは、ご家族が地元の精神保健福祉センターや保健所に相談するか、アディクションを専門的に扱っている医療機関や相談機関を紹介してもらうようにするといいでしょう。そのようなところでは、家族へのカウンセリングや集団療法が行われているはずですし、また自助グループを紹介されることもあるでしょう。 家族がなぜそういうところに通わなくてはいけないかとお思いかもしれませんが、本人があまり困らず家族が困っているという構図を、家族が楽になって本人が困るという関係に変えない限り、本人はそれまでの行動を変えようとはしません。そこで、ご家族が楽になるための方策を考える必要があるのです。

本人が自分のアディクションから回復したいという気持ちになったら、専門機関に通っていただき、本人のための自助グループに参加するという段階になります。この場合、専門機関よりも自助グループへの参加のほうが重要です。ギャンブル・アディクションの自助グループは長野県でも活動を開始しつつあります。

 全国的な活動をしている自助組織として、NPO法人ワンデーポート(045−303-2621)があり、さらに借金の処理については、全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会事務局(03-3774-1717)や(財)日本クレジットカウンセリング協会(03−3226−0121)に相談するといいでしょう。

  加藤 信
(松本市 かとうメンタルクリニック)

眼疾患・人生行路

年齢別に、大切で重要な眼疾患につき、ポイントを解説します。 

 先天性鼻涙管閉塞


 人生、オギャーと生まれて、まず最初に遭遇する比較的頻度の高い疾患です。生後すぐから片目(まれに両目)のメヤニや涙が続き、点眼しても良くならないかすぐ再発する場合は、この疾患の可能性が高く、遅くても生後3ヵ月までには眼科を受診して下さい。治療が遅れると、非常に治りづらくなります。

 

 弱視、斜視、遠視


 生後3ヵ月から6歳までは、これらの疾患に注意が必要です。目つきが悪い、視線が定まらない感じ、目を細めて見たり頭を傾けて見たりしている場合は、早めに一度、眼科を受診して下さい。これらの疾患の可能性がかなりあります。治療が遅れると治りづらく、メガネをかけても一生良く見えない目になってしまうことさえあります。片目のみ悪い場合は、外見上、全く分からないこともありますので、1ヵ月に一度、片目ずつ交互に手で目をおおい嫌がり方に明かな差がないかチェックしてみて下さい。明かな差がある時は、片目の視力が悪い可能性がありますので、すぐに眼科を受診して下さい。

 

 近  視

 

言葉をしゃべれるようになれば、見え方に明かな差があるか尋ねて下さい。見え方が同じでないと言う時は、すぐに眼科を受診して下さい。 6歳から20歳くらいまでは、何と言っても近視になりやすいです。今や若者の半数は近視です。ただ、近視だと思っていたら、眼底疾患などの目の病気で手遅れに近い状態だったということもありますので、片目でも見づらくなったら、あまり不自由がなくても眼科をすぐに受診して下さい、また、ごく早期の近視の場合は、時に点眼治療で治ることもあります。

 

 眼精疲労、ドライアイ…そして老眼


 20〜40歳台は働きざかりで目を使うことが多く、目の疲れ、乾き、熱感、しぶい痛みを訴えがちです。程度が軽く、見え方が良く、目を休めれば回復するようであれば、少し様子をみても結構ですが、長期に続く場合や我慢しがたい時は、眼科を受診して下さい。治療で非常に良くなることがあります。また、眼底疾患などの重大な病気か見つかることもあります、40歳を超えますと、老眼の初期の変化でこれらの症状がでていることもあります。近くを見るのに不自由がなくても、メガネをかけると、これらの症状が劇的に改善されることがあります。 

 

 白内障、緑内障


 白内障は、50歳以上では軽いものも含めれば、30%の人に認められます。緑内障も意外に多く、40歳以上の人の4%は緑内障で、年齢が進むにつれ増えて、80歳以上では10%近くになります。白内障だけで他に目の病気がなけれぱ、今は手術で95%以上よく見えるようになりましたが、進行するにつれ手術の成績は少しずつ悪くなります。緑内障の手術は、失明回避が目的で、一般に視力、視野の改善はありません。だから、かなり進行してから眼科を受診したのでは完全に手遅れの場合があります。
 一般に白内障は手術で良く見えるという認識がありますので、片目が多少見づらくなったくらいでは生活に支障がないため眼科を受診せず、いよいよ生活ができないほど悪くなってから初めて眼科を受診する人がいます。ところが、白内障ではなく緑内障であったというケースがかなりあります。緑内障で生活ができないほど見づらい目は完全に手遅れです。両目で見ていると、気づかないこともあります。
 最低、1週間に一度は片目ずつで見て、少しでも以前より見づらい時は、すぐに眼科を受診して下さい。また、見え方が良くても、緑内障になっている場合もあります。3年に一度は、眼科検診を受けることをお勧めします。特に近親者に緑内障の人がいる場合は、強くお勧めします。緑内障は早期発見が第一です。

多田 博行
(佐久市 博愛眼科クリニック)

夜尿症について

Q 夜尿症とは?
A 夜尿(おねしょ)とは睡眠中に無意識に排尿することです。5,6才を過ぎても月に数回以上おねしょすることを夜尿症といいます。多くは発育に伴って徐々になくなってきます。6才児では10〜20%、小学校高学年では約5%程度にみられます。

Q 夜尿症の原因は?
A 95%以上は機能的原因で起こります。すなわち夜間膀胱に尿を溜める機能が十分にないためです。残りは器質的原因によるものです。すなわち膀胱尿路奇形、脊髄の膀胱を調節する神経病変、尿路感染症、糖尿病や尿崩症のように多尿をおこす疾患、てんかん発作による尿失禁等です。

Q 夜尿症にはどんなタイプがありますか?
A 夜尿症には多尿型、膀胱型、混合型があります。
多尿型 多尿型は夜間の尿量および昼間のがまん尿量(膀胱容量)が多いタイプです。すなわち夜間尿量および昼間のがまん尿量が6〜9才で200ml以上、10才以上で250ml以上のタイプです。

混合型 混合型は夜間多尿型であるが、昼間のがまん尿(膀胱容量)が6〜9才で200ml以下、10才以上で250ml以下のタイプです。

膀胱型 膀胱型は夜間尿量および昼間のがまん尿量が6〜9才で200ml以下、10才以上で250ml以下のタイプです。
多尿型は身長が小柄で習慣的に水分を多くとっている傾向があります。膀胱型は昼間もおしっこが近く、ちびったり、冷え性を伴っていること多いようです。

Q 夜尿症の治療はどのようにしますか?
A まず夜尿症の診断のために夜尿日記を記録してもらいます。
夜尿の時間、回数や尿量、尿の濃さ、昼間のがまん尿量、飲水量等を記録してもらい、タイプを判断します。また機能的か器質的か診察、血液・尿検査、尿路系の超音波検査を行います。器質性の異常があれば泌尿器紹介や原疾患の治療を行います。機能的なものであればタイプにかかわらず基本は生活指導です。まず本人に夜尿症について理解してもらい、保護者に対してはあせらないこと、怒らないこと、睡眠中起こしてトイレに連れて行かないことを指導します。
夜間起こしてトイレに連れて行くと、睡眠リズムが乱れ、抗利尿ホルモンの分泌も乱れます。また膀胱に尿を溜める力が発達せず、トイレおねしょになるだけです。

普段から水分をとりすぎないこと、睡眠3時間前からは特に水分制限すること、塩分制限(うす味にすること)、冷え性の子は就寝前にゆっくり入浴したり、保温に注意することが大事です。

薬物療法としては抗利尿ホルモンの点鼻、三環系抗うつ病薬や抗コリン薬の内服、冷え性に対して漢方薬内服があります。その他にアラーム療法、干渉低周波電流による膀胱電気刺激療法等があります。
多尿型で夜間尿が低浸透圧(薄い尿)であれば抗利尿ホルモンの点鼻が有効です。多尿型正常尿浸透圧の場合は三環系抗うつ薬内服、アラーム療法が行われます。

膀胱型には昼間排尿の我慢訓練、抗コリン薬内服、アラーム療法、干渉低周波電流刺激療法等が行われます。
アラーム療法はパンツの水分感知センサーを取り付けて、夜尿があるとアラームが鳴ります。子どもはアラームで目覚め、排尿を抑制します。その後トイレに行かず、再び睡眠することによって膀胱容量が増えてきます。最近ではアラーム療法の有効性が強調されています。

最後に
夜尿症はありふれた症状です。ご家族で子どもを励まし、けっして怒らず必ず治るのだと安心させてください。また詳しくはインターネットでおねしょナビ
日本夜尿症学会ホームページにアクセスしてみてください。

 新川 一雄
(長野市 あらかわ子ども医院)

痔疾患番外編

痔とは何でしょうか。肛門とその近所の病気の総称です。痔疾患の御三家は痔核、痔瘻、そして裂肛で、皆さまよくご存じの病気です。これらについてお話ししても、またかということになりますので、本稿では他の事柄について述べてみたいと思います。

 

 「いぼ痔も痔、あな痔も痔、はす痔、きれ痔にさけ痔も痔、はしり痔、かゆ痔にけいかん痔、百いぼ、しめり痔、あらいすぎ」。痔の早口言葉です。一気に言ってみてください。
 いぼ痔は内・外痔核、あな(穴)痔、はす(蓮根)痔は痔瘻、きれ痔、さけ痔は裂肛、はしり痔は血がピューととぶ内痔核、かゆ痔は肛門?痒症、けいかん(鶏冠)痔は鶏のとさかが合わさったように見えるところから脱肛を意味します。百いぼは、尖圭コンジローマのことで、俺の彼女はカズノコ天井といばっている人がおりました。しかし、これは秘所に百いぼが生じていたのでしょうか。性病の一種ですよ。ご用心、ご用心!!しめり痔は汗や分泌液でべとべとしている肛門のことです。
 あらいすぎと最後に書きましたが、近年シャワートイレが普及し、かくれた所のおしゃれとして、排便後、洗浄する方が多くなりました。それに従って、温水トイレ症候群という新たな疾患?が話題になりつつあります。すなわち肛門を紙で拭かなくなったため、肛門周囲の皮膚が弱くなり、慢性的な皮膚炎をおこし、かゆくなる。掻くとただれる。汁がでる。温風で乾かすと油気がぬけて皮膚ビランとなる。肛門内に水を吸いこんで、後で少しずつ漏れだし、しめり痔になるといった病状です。洗ってもよいのですが、何事もほどほどにしてください。

 次に直腸肛門内異物も時々みられます。口から入って最後の関門で御用となるのですね。魚骨、つまようじ、焼芋の皮、お菓子の包装紙の切れ端、栗の皮、時に義歯等々、突然、肛門痛が生じ来院され、異物を除去するととたんに痛みがなくなる。魚骨をとってあげた時、奥様に「あんた、犬猫の方がよっぽどうまく食べるよ」と叱られている方がおられました。

 さらに下から物を入れる方々もおられ、困ったものです。17.5cm×4cmの毛染めスプレー缶、3.5cm×7cmのボディソープ入りの壜、10cm長のバイブレーター(一晩動きっぱなし)、8×6cmのお茶碗(どうして入ったのかわかりません)。極めつけは16cmの鉛筆。これには「誘惑に負けない勇気、強い意志、○○防犯協会」と刻印されていました。
 皆さま、肛門は出すところであって、入れるところではありません。油もつけずに入れると四方八方のきれ痔になりますよ。

渡辺 豊昭
(松本市 渡辺肛門科医院)

不妊について

    こどもが欲しい


 不妊を訴える患者さんが増えてきております。10組に1〜2組のカップルは不妊、というデーターもあります。以前は、「こどもをさずかりたい」と表現しましたが、最近は「つくりたい」と言う人が多いですね。

   不妊症は増えているのでしょうか

 小学校唱歌「赤とんぼ」3番、「十五で姐(ねえ)やは 嫁に行き」
現在晩婚化のためか、初めての出産年齢は平均28〜29歳といわれており、昔より確実に10歳は遅くなっております。卵巣には生まれつき決まった数の卵子しかなく、毎月多くの卵子が死滅してゆき閉経で無くなります。どうも反応性の良い卵胞から破裂してくるようで、加齢により良好な卵子も減ってくると考えられております。
 精子は歳をとってもある程度は新たにつくられておりますが、世界中の男子の精子数は減ってきている事も判ってきました。

    見えてきた妊娠のメカニズム

 以前では妊娠不能であったご夫婦でも、妊娠のメカニズムの解明がすすみ、高度先進不妊治療により、子供がさずかる事が出来るようになってきました。
 高学歴社会になった今、○歳までに○をやって、○歳で結婚して、○歳で子供を生んで、と計画を立てるキャリアウーマンが多くなっております。そうしますと、計画通りにすすまないとあせってしまいつい、不妊症では?!となってしまいます。
 都会に住むキャリアウーマンの中には、一定期間妊娠しないと直ぐに体外受精に踏み切る方もいます。何せ、出生56人に1人は体外受精児の日本です。

   プロレスラーがさずかった

 東大病院で体外受精を受けたものの不成功だった更年期年齢のプロレスラーが、その後自然に妊娠しかわいい赤ちゃんを産んだという出来事がありました。たまたま、良好な卵子が排卵されうまく精子と出会ったためでしょう。体外受精の刺激が良い影響をもたらしたのかもしれませんが、まさに「さずかった」と言いたくなりますね。
 長期不妊で体外受精し妊娠分娩のあと、何年かして自然妊娠ということも当院でも時にあります。では、体外受精をしないでおいて、その時まで待っていれば妊娠したのか、それはわかりませんが多分駄目だったでしょう。

   不妊治療

 不妊の原因はいろいろですが、半数は検査をしているうちに妊娠してしまいます。受診しなくても出来たのでしょう。残りの半分は、何らかの原因が判ります。残りは、現代の医学では明らかな原因は判らないグループです。その中に、このご夫婦は体外受精すれば妊娠しそうだな、という例があります。その方たちも、年齢がすすんでくることによって、体外受精でも難しくなってきます。
 自然に妊娠するのがbestですが、なかなかさずからない時には、やはり専門医に心を開いて相談してみましょう。たとえ高度先進不妊治療で生まれる赤ちゃんも、「つくる」のではなく「さずかる」のですから。

三浦 秀輔
(上田市 三浦産婦人科医院)
 

認知症の理解のために

認知症を理解する事は結構難しいです。それでも、理解するために役に立つ法則的なことがあります。それを理解していただければ、当事者の悩みが少しは減るでしょう。

 第1法則 記憶障害に関する法則

 たとえ実際にあったことでも、その記憶がなければその人にとっては事実たり得ない。

@記名力低下:体験したことを瞬時に忘れてしまうひどい物忘れ同じ事を何度も話すのも自分が話をしたことを瞬時に忘れてしまう 。                    

対応)同じ事を繰り返していると反論しても無駄。「このひとはうるさい」と患者が思うだけ。反論しないで聞き流す。

A全体記憶の障害:出来事全体をごっそり忘れてしまう状態  食事をした直後でも食事の催促をするのは食べたことを忘れているから。

対応)「今食べたばかり」と反論するのは逆効果。「今用意している」などと言う。あらかじめ用意しておいたおにぎりなどを出したりする。

B記憶の逆行性喪失:「蓄積された記憶が現在から過去にさかのぼって失われていく現象」その人にとっての現在は記憶に残っている時点にある 「自分の妻を自身の親と思ってしまう現象」本人の意識が若年時に戻ってしまっているからである。

 第2法則 病状の出現強度に関する法則

「より身近な人に対して強く出て、身近でない人の前では出ない」介護者に一番つらくあたるので、介護者は患者さんが意地悪しているように思える。

 第3法則 自己有利の法則

 「自分にとって不利になる事は絶対に認めない」うそでも認めない 認知症では判断力や理性が低下していて、本能的な自己保存意識が前面に出ているためで、悪意はない。

 第4法則 まだら症状の法則

 「正常な言動と異常な言動が混在する」認知症の初期には正常な言動が大部分であるが、物取られ妄想などの異常が混じってくる。正常と思える人が異常なことを言うので周囲が混乱する。

 第5法則 感情残像の法則

 記憶などの機能は低下しても、感情のレベルは低下せずむしろ鋭敏になっている。 他人から忠告されても理解できず、怒られたと言う感情をうける。説得よりも同情で対処する。一度感情を害すると、長くその感情を保つため介護の妨げになる。

 第6法則 こだわりの法則

 1つの事にこだわる。周囲の人が否定すればするほど一層こだわる。実害がなければそのままにしておく。患者さんは権威者に弱いので医師や看護師から説得してもらう。

「貯金がなくなった。」と言い続ける場合、銀行員に依頼して貯金が安全な事を説明してもらう。虚偽でも良いので納得してもらう。  

中島勉
長野市 中島医院

高度な人間業をこなしている喉の話

 「喉元過ぎれば熱さを忘れる。」今回は、ふだんあまり意識しないで高度な人間業をこなしている喉のお話しです。


 喉の働きは、大きく三つに分けられます。呼吸通路の制御・摂食嚥下時の下気道保護・発声です。弱肉強食の世界に生きる大半の動物種は生存競争のため頑強な身体とそれを支える呼吸・摂食機能の強化が必須でした。人間以外の動物種の喉は、発声機能よりも、大量のエネルギーを筋肉に注ぎ込むため呼吸・摂食機能が優先され、空気と食べ物がそれぞれに通過しやすい喉元の構造になっています。喉元の嚥下困難などどこ吹く風です。


 一方、社会的存在として生きざるを得ない人間にとって最も優先すべき喉の機能は、音声言語を生成する発声気管としての働きです。生存に必要な呼吸・摂食機能を多少犠牲にしても音声言語に因るコミュニケーションの進化・発達が人類の繁栄のために優先されたのでしょう。人類の特徴は、道具と言葉が使えるこだと言われています。この道具と言葉のおかげで、人類は哺乳類としては体長の割に寿命が長く、地球上の様々な環境で効率のよい安定した栄養摂取が可能となり地上での大繁殖に至りました。

 


音声言語コミュニケーションにおける「イ」音は、最も人間らしい声

 

  人類が音声言語を獲得するための身体的条件として、口腔・咽頭・喉頭にある発声器官の形状及びその運動が重要になります。すなわち、声帯を囲む喉頭の位置が他の哺乳類に較べて垂直で低い位置にあり咽頭での声道を広く確保できたことに加え、口腔内では水平の声道を丸みのある舌が様々に変形し咽頭腔と口腔をそれぞれ広げたり狭めたりして巧みな母音の構音機能を果たしています。

 

例えば、母音の「イ」は、人間ではどの言語でも発音されているようですが、類人猿のチンパンジーには発音出来ない音声のようです。母音の「イ」はスーパー母音と呼ばれ、アイウエオの5母音の中で最も明瞭で識別しやすい母音音声だそうです。音声言語コミュニケーションにける「イ」音は、最も人間らしい声と言えます。写真撮影のときなどに、歯を見せて「ニー」と発音すると笑顔の表情になります。笑顔も非言語的コミュニケーションとして人類に特徴的なものです。

 


人類発展の陰で犠牲になった健康状態

 

 「イ」音の発声時の声道は、舌が変形して口腔前方が狭くなり、口腔後方から咽頭にかけての空間が広くなっています。この声道形状を実現するために、顎が後退し、喉頭が低位置になる必要があります。こうして人類はスーパー母音「イ」を獲得しましたが、その陰で個体の健康を多少犠牲にしてきました。


 人類発展の陰で犠牲になった健康状態とは、睡眠時無呼吸症候群と誤嚥性肺炎です。軟らかく栄養価の高い食事を摂る現代人の顎はますます小さく後退し、相対的に丸く大きくなった舌が睡眠時に気道を閉塞し睡眠時無呼吸症候群を引き起こします。近年、イビキを余りかかないとされた乳児や若い女性にまで睡眠時無呼吸症候群が広まっています。また、喉頭が低位置にるためムセ易く、摂食嚥下障害を持つ高齢者の大半は誤嚥性肺炎で亡くなっています。


 このように、イイ声と強い体は、両者を同時に満たすことの出来ないトレードオフの関係になっていて、人類はイイ声の代償として睡眠時無呼吸症候群や誤嚥性肺炎を甘受したのでしょう。

三田 温
(茅野市 三田耳鼻咽喉科医院)

本当は怖い歯ぎしりの話

夜間歯をぎりぎり擦り合せる歯ぎしりは周りに迷惑になるばかりではなく歯ぎしりをしているご本人の歯にとって悪い影響が大きく、強い歯ぎしりをする人ではその被害は甚大です。

 歯科では他にぎゅっと喰い縛ってしまう癖も含めて“ブラキシズム”といいます。ほとんどの人はブラキシズムをしているといわれていますが必ずしも音が出るとは限りませんし、なにぶんご本人は寝ている間の事なのでブラキシズムを自覚している人は少ないようです。咬む筋肉の力の弱い人はあまり歯に害を及ぼす事はありません。

 寝ている間にブラキシズムをしていると噛み合わせによってはいつも特定の歯に強い揺さぶりの力をかける事になるのでその歯は急速に歯周病が進行します。現象としては歯が歯周病で動くようになり駄目になるので歯科医もご本人も歯周病で歯が駄目になったと思っていますが本当の原因はブラキシズムである事がかなり多いのです。

 その他にブリッジになっている歯にブラキシズムの力がかかると支台となっている歯のセメントが溶け出してしまう事があります。1本の歯の被せや詰め物なら取れて来るので気が付きますがブリッジのように何本もの歯がつながっていると一部のセメントが外れても取れてきませんから、セメントが取れた歯は数ヶ月で虫歯が進行してしまいます。神経を取った歯では痛みが出ないため、気がついた時には歯を抜かなくてはいけなくなってしまう事もあります。この場合も患者さんは単に虫歯で歯が駄目になったと思っていますが本当に原因はブラキシズムにあるといえるでしょう。

 さらにブラキシズムで揺さぶられている歯は折れたりかけたりしやすく、朝激痛で目が覚めてみると虫歯も無かった奥歯がまっ二つに割れて歯科医院に駆け込む人もいます。私もそういう患者さんを過去2〜3人経験しています。たいてい歯の根まで割れてしまうと抜歯になってしまいますがそんな場合もただ咬む力の問題ではなく本当の原因はブラキシズムにあるといえるでしょう。

 他に夜間のブラキシズムが原因で肩こりや首の痛みなどを訴える人もいます。もし歯ぎしりを自覚している人、音はしなくても歯がすり減り平らになっている人、過去に次々に歯周病、虫歯、歯根破折などを繰り返し歯を失った人は自分がブラキシズムをしていないか疑ってみる必要があると思います。

 治療として歯ぎしりそのものを止めさせる事は難しいですが夜間ナイトガードというマウスピースを装着する事で歯をブラキシズムから守る事ができます。一度かかりつけの歯医者さんに御相談下さい。

布山 徹
安曇野市 布山歯科医院

住宅と住まい手の健康のかなり深い関係

死亡や重大な後遺症に直結


 6月の岩手・宮城内陸地震など最近は大きい地震が目立ちます。耐震補強を行っていない古い住宅では倒壊して圧死・窒息死する可能性があります。
 全国的にみると住宅内にいて熱中症を発症するケースが少なくありません。「さわやか信州」なら大丈夫だろうと思う方も多いでしょうが、非常に暑い住宅では何らかの対策が必要です。


 一酸化炭素中毒の事故は、主に室内に燃焼器具があり不完全燃焼をおこすことで発生します。湯沸かし器、レンジ、風呂釜などガス器具の使用時や、ファンヒータや石油ストーブなどを密室で1時間以上使用した場合におきることがあります。


 住宅の火災で逃げ遅れる理由は、建材や家具が燃えて発生する一酸化炭素や有毒ガスを吸って意識を失ってしまうためといわれています。これを防ぐには、火災報知器の設置や新改築時の建材選定での知識が必要です。

 

過乾燥と加湿

季節外れではありますが、室内が過乾燥になる仕組みについて述べたいと思います。
 まず冬の室内の湿度が低い理由です。空気中に存在することができる水蒸気の量は空気の温度によって決まっていて最大量を飽和水蒸気量といい、飽和した状態が相対湿度100%です。本年1月7日8時の松本の気温は0℃、相対湿度72%でしたが、0℃の飽和水蒸気量が4.8g/ですので、この時の外気中の水蒸気量は3.46g/。この空気を室内に持ち込んで温めて15℃にすると、この温度の飽和水蒸気量が12.8g/なので、相対湿度は27%にしかなりません。


 最近の住宅は乾燥しやすいといわれているのは、機械換気が義務付けられ水蒸気をあまり含まない冬の外気を持続的に取り込んでいるためと、家全体が古い住宅よりも暖かいので相対湿度では低い値を示すのが一因です。また最近は空気を汚さない暖房器具がふつうになっています。床暖房、エアコン、FF式ファンヒータなど室内に水蒸気を放出しない暖房器具を使用する際は、計画的に加湿しないと過乾燥になってしまいます。


 人体に近い場所に熱源があると赤外線により乾燥しやすくなります。また、室内に気流があると、相対湿度が同じで気流がない場合に比べて乾燥が進みます。その他、皮膚や粘膜の乾燥が増す要因として、室内に排気が出る普通のファンヒータやストーブから大量に排出される窒素酸化物や、建材や灯油燃焼ガスに含まれるホルムアルデヒドが、アトピー性皮膚炎や喉の弱い人では乾燥の原因になるとされています。


 一方、加湿器や普通のファンヒータ・ストーブなどを使用して室内に水蒸気を発生させると、住宅内の一部が低温である場合、その場所が集中的に結露するので注意が必要です。
 理想的には、風がおきず空気を汚さない暖房装置を人体から離して使い、住宅内のどこにも低温の場所をつくらないようにし、適切な加湿器を使用しておくと、過乾燥と結露を同時に防ぐことができます。
 

蓑島 宗夫
(松本市 みのしまクリニック)

微生物との共棲、共生を円滑に

いろんな場面において閉塞感といいますか、袋小路に入ってしまう感じのする今日ですが、まだまだ解決の見通しあると考え、表題の「微生物への対応」について、医療にかかわる者として、展望を語らせていただきます。
 微生物との係わりあいは、環境改善・食べ物加工などで濃密になっており、健康保持への貢献大なるものがあります。これらは、一層大事にしたいものです。

医療分野では、対面・対決的 

 病原微生物に遭遇しますと、「感染・発病」という現実的な場面となります。私共の体には「防御機構」があり、体調などふくめ「一般的対応」と、免疫とよばれています「特異的対応」があり、3層(3分野)構造となっています。
すなわち、@リンパ球(その主力T細胞とよばれる)がかかわる細胞免疫A血清中の免疫グロブリンの活性化による液性免疫B腸や鼻の粘膜に出てくる分泌液にある「分泌性IgAグロブリン」による局所粘膜免疫 があり、それぞれ協力しあって「防御」しております。小児マヒ(ポリオ) は、48年前までは皮下ワクチンでしたが、Bの事実が解明され、当時の「ソ連」から緊急に生ワクチン輸入(当時の母親を中心とした大運動が実った。筆者は学生でしたが、微生物の教授へ生ワクチンの輸入を要請しました。この方、妙高山麓で誕生ということで長いおつきあいとなりました)。
 この「局所免疫」という機構が解明されてから、インフルエンザをふくめ呼吸器病ウィルスへの対応は、気道粘膜に効果的バリアーをいかに張るかが課題となっております。現行の皮下接種では、効果はのぞめません。袋小路です。

当面の対策

 インフルエンザウィルスの力をおさえる方法として、現行のワクチンではなく次の方法をすすめております。@冬季居住空間温度6〜7℃、湿度50〜60%。要するに温度を上げずに湿度を上げる。A各ウィルスによる重複・混合感染がないことの利用(例、反復性ヘルペス感染にかかっていると軽い)。

展 望

 地球誕生46億年前から生き続けている微生物。たとえば「原核生物−真正細菌グラム陽性菌、古細菌高度好塩菌」などには、高温の中でいきつづけてきた「特長」がなにかあるのだとおもいます。細かいことは専門家にゆだねるとして、こうした微生物の力をかり、大局的・歴史的な視点にたち、微生物との新たな共生をかちとりたいものです。

 河原田 和夫
(長野市 あおぞら診療所いまい)

心の病にどう対応するか

 毎年の自殺者の数が3万人を超え、作家の五木寛之氏の言葉を借りれば、広島の原爆が3年に1回は落ちているような死者の数といわれるほど、深刻な事態になっています。どうしてこのようなことになってしまったのか、さまざまな分析はあるようですが、やはりきわめてきびしい競争社会になってきたことが、理由の一つとしてあげられるのではないかと思います。こういう状況の中では、概して義務感・責任感の強い勤勉な方ほど、挫折をきたしやすいのです。今回は、職場における心の病への対応、とくに「うつ病」について述べてみたいと思います。

まず、心の変調というものは、外見的にすぐわかるようなものではありません。自殺者の生前の様子がまったく普通だったということは、しばしば聞かれることです。そしてこういう自殺者のほとんどが「うつ病」と思われます。やはり、日ごろからメンタルヘルスに関する知識を普及しておくことや、相談しやすい雰囲気を作っておくことが重要ではないかと思います。幸い、このところうつ病に関してわかりやすいパンフレット等が作られていますので、そういうものを利用する方法もあるでしょう。

 

■心の病をもつ人への対応の原則

 心の病をもつ人への対応の原則は、誠実さと率直さです。感じていることは率直に伝えて結構ですが、この場合、決めつけにならないよう配慮することは重要でしょう。事実は事実、意見は意見として伝えることが最も説得力に富み、誠実な態度であると思われます。
 たまにあることですが、医師が休養を勧める前に「1週間休んで完全に治してこい、ついてはその間の治療方針を医者に決めてもらえ」などとおっしゃる上司の方がいます。お気持ちはわかりますが、こういう対応は適切とはいえません。まず、この上司は口では治療方針を医者に決めてもらえといっておられますが、1週間の休養を勧めて医師よりも先に「治療方針」を決めておられるところが問題です。意図的であるかは別にして、療養上の責任はそれでも医師にとってもらおうということですから、医師としては大変やりにくいことになります(心の病で、1週間の休養で完全に治るものはありません)。それにこういう場合、上司と本人の人間関係の中に問題の本質があることが多いのです。

 

■うつ病の療養の基本は休養です。

うつ病の場合、療養の基本は休養です。最近は、すぐれたクスリが続々と登場してきています。病状によっては、ある程度の仕事をこなしながら服薬によって改善することも期待できます。なぜクスリが効くのかはわからない点がありますが、「うつ」では主に脳内物質のセロトニンの働きに微妙なズレがおこっており、これを修正するのがクスリであろうと考えられています。

 病状が改善し、職場復帰の時期を迎えます。この場合も、「完全に治してから復帰してこい」ではうまくいきません。病状はよくなったとしても、それは仕事のストレスがないときの話で、いざ仕事となればケタ違いに疲労するのがむしろ普通です。半日程度から出勤を開始し、2〜3週かけて徐々に勤務時間を増やしていく方法をお勧めします。「会社はリハビリ施設ではない」かもしれませんが、「会社復帰」のために最も効果的なリハビリができるところも会社なのです。まじめで勤勉な人材の能力を十分に引き出すためにも、ご理解いただければ幸いです。 

 加藤 信
(松本市 かとうメンタルクリニック)

親しらずの抜歯は怖いですか?

今年20日付け信濃毎日新聞に「親しらずの抜歯には個人差」という記事がありましたが、お読みになられた方もいらっしゃることでしょう。今回はその記事に紹介しきれなかったと思われる内容についてご説明したいと思います。

さて、そもそも親しらずは必ず抜かなければいけないのでしょうか?いえいえそんなことはありません。親しらずの状況に応じて判断します。完全に骨の中に埋まっていて、一本前の歯の歯周ポケットと親しらずが全く交通していない場合、抜歯する必要がないと考えられます。一部交通している場合でも歯周病コントロールがよく、親しらずが悪い影響を与えていなければ抜歯の必要はありません。ただその時点では悪い影響を与えていなくても、歯周病の進行と共に影響を与えるようになっていくことがあり注意が必要です。ですから親しらずの抜歯が必要になってくるかどうかの判断には、歯周病の定期的なチェックが欠かせないということになります。


親しらずを抜くと腫れる?

上顎にしろ下顎にしろ、埋まっている歯を抜歯するときは、歯肉の切開や骨の削除が必要な場合が考えられますので、腫れる可能性が高くなります。しかし腫れ方はその人の体質や体調、親しらずの埋まっている状況によって違ってきますので、一概に皆さんが噂で聞くように「すごく腫れて痛かった」となるとはかぎりません。どの程度が予想されるか、担当の先生の説明をよく聞いてください。また、きちっと生えている歯で特に上顎の親しらずの場合、抜歯はほんの数分間で済みます。非常に簡単な事が多いのに不正確な情報から過剰に怖がっている方も多くいらっしゃいます。その場合全く腫れないのが普通です。


親しらずの抜歯によって神経が傷ついて麻痺が出ることがある?

上顎の親しらずの抜歯では、神経損傷は通常おこりません。下顎の場合特に深く横に寝転んだように骨の中に埋まっている親しらずの抜歯では起こる可能性があります。しかしその場合も頻度は高くなく、通常のX線検査で危険性が高いと判断された場合、CTレントゲン撮影を行い、下顎神経と親しらずとの関係を立体的に調べ可能な限り安全に抜歯を行うことが最近ではできるようになっていますので、CTが開発される以前に比べ、神経損傷の危険性はずいぶん少なくなっているものと考えられます。ただし、舌神経麻痺はCTでも位置関係を確認することができない為、細心の注意を払っても起こってしまうことがあります。しかし、舌神経麻痺の頻度は非常に少なく、例えば当院の場合約1000本の親しらず抜歯で1度起こった経験があるだけです。

 そうは言っても親しらずの抜歯の中には、相当に危険なものもあります。抜歯によって発生するかもしれない合併症による不利益とその確率と、抜歯しなかった場合に起こりえる不利益との説明を十分に受け、その2つを天秤にかけて判断する必要があるでしょう。わずかな可能性しかない危険性を恐れるあまり長期間放置し、親しらずのみならずもう1本手前の歯までだめにしてしまわないようにしていただきたいと思います。

抜歯経験豊富な担当医と十分に検討された上で判断されることをおすすめします。

小塚 一芳

(茅野市 たんぽぽ歯科クリニック)

紫外線と皮膚

日毎に陽射しの強くなるこの頃、紫外線が気になる季節になりました。そこで今回は、紫外線の皮膚に及ぼす影響とその対策についてお話しすることにいたします。

紫外線とは

 太陽の先には可視光線の他に目に見えない紫外線と赤外線が含まれています。図に示しますように、波長の短い方から紫外線、可視光線、そして赤外線となっています。この紫外線も色々な理由により3つに分類されています。可視光線に近い方から順に、A波長紫外線(UV-A)、B波長紫外線(UV-B)、C波長紫外線(UV-C)、と呼ばれています。このうち最も波長の短いUV-Cは大気圏中のオゾン層で吸収されて地上には到達しません。そこで問題になるのはUV-AとUV-Bということになります。

 

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UV-C 大気層(オゾンなど)で吸収され、地表には到達しない。
UV-B ほとんどは大気層(オゾンなど)で吸収されるが、一部は地表へ到達し、皮膚や眼に有害である。日焼けを起こしたり、皮膚がんの原因となる。
UV-A UV-Bほど有害ではないが、長時間浴びた場合の健康影響が懸念されている。しわの原因になる。


急性障害

 まずは日焼けです。皮膚のタイプによって違いはありますが、紅くなってやがて色素沈着を起こすものです。軽いものは日常的に経験するところですが、海水浴などで急に広範囲に長時間紫外線にさらされますと、これは大変なことです。痛みを伴う紅み、水疱、ただれが現れ、脱水症など全身症状を伴うことにもなります。次に局所免疫能です。口唇や口の周りに再発性の単純疱疹の出る方は要注意です。局所の免疫低下により単純疱疹が発生しやすくなります。

慢性障害

 長年、日光にさらされますと、シミやしわ、そして老人性疣贅が現れてきます。更には前癌状態を経て悪性腫瘍を発生することになります。これらは加齢とともに多くなりますので老化現象ととらえられがちですが、光老化と言われるように、実は紫外線によるものです。つまりこれらは予防すれば防ぎ得るものなのです。

紫外線防御対策

 日本で紫外線の一番多い都市はどこだと思いますか?実は松本なのです。沖縄の那覇よりも、九州の宮崎よりもです。標高が高いこと、日照時間が長いこと、それから空気が澄んでいることによるからです。季節別にみますと4月から9月までが紫外線は多く、一日のうちでは10時から14時が強いと言われています。また曇りの日も80%は紫外線を通していますので要注意です。
 そこで対策です。まずは紫外線の強いときは外に出ないこと。もちろん外に出なくてはならない場合はいっぱいありますよね。その時は帽子、日傘そして日焼け止めクリームを使いこなしましょう。日焼け止めクリームには吸収剤と散乱剤の2種類があります。吸収剤といわれている方には化学物質が含まれていますので、時にかぶれを起こすことがあります。アトピー性皮膚炎やかぶれやすい体質の方は散乱剤を選ぶのがよいでしょう。ちなみにガラスはと言いますと、UV-Aは通しますが、より皮膚に影響の強いUV-Bはカットしますので車に乗るときは窓を閉めておくのがよいでしょう。
 紫外線についてお話ししましたが、もうすでに慢性障害が出てしまっているという方、中には悪性腫瘍が混っていないとも限りません。お気軽に専門医にご相談下さい。しわはちょっとむずかしいのですが、シミも良性の腫瘍も消すことはできます。

 二條 貞子
(松本市 二條皮ふ化クリニック)

帯状疱疹の話

帯状疱疹はどのような病気かご存じでしょうか。ほとんどの患者さんが罹ってからどういう病気か認識することが多いようです。帯状疱疹は子供の時に日本人の9割以上が罹る水痘(みずぼうそう)の再発で、その意味では日本人の9割方に帯状疱疹になる可能性がありますが、実際に発病するのはそのうちの2割から3割と言われています。若年者に比べて高齢者に多くまた悪化しやすい傾向が見られます。水痘のウイルスは知覚神経の根元の神経根といわれる部分に潜んでいて、免疫の力が弱ったりした場合にその神経づたいにその神経を破壊しながら末梢、つまり皮膚へ向かって広がってゆきます。皮膚に発疹の生じた時はすでに神経はウイルスにすっかり侵されてしまっているのです。だから大抵の場合、発疹の生じる数日前からその部位に何らかの痛みとか風邪のような全身症状が生じることが多いのです。

私のペインクリニックを訪れる4人に1人は帯状疱疹

帯状疱疹は頭のてっぺんから足の先までどこでもできる可能性がありますが、一番多いのが胴体(背中から胸部にかけて)で、2番目が額(前額)です。手足にも出来ますし陰部に出来る場合もありますが、陰部に出来た場合は痛みが長引いたりすることがあり、少々厄介です。帯状疱疹は普通、片側にしかできません(扁側性)。その名前の由来は胴体に生じた場合、知覚神経の支配領域に一致して背中から胸にかけておび状に発疹がべったりと生ずるからです。何れにしてもこのウイルスに侵される神経は痛みを伝える知覚神経なので必ず痛みを伴います。時に夜も眠れず食事もとれないほどの痛みを生じることもしばしばです。私のペインクリニックを訪れる4人に1人は帯状疱疹の患者さんですが、最初に痛みがなく水泡が治りかけてから痛みの出だす患者さんのほうが痛みの程度が強くしかも長引く傾向があるようです。

ウイルスを殺す薬の投与と痛みの治療の2本立てが基本です

治療は出来るだけ早期に開始することです。早ければ早いほど早く治り、痛みも軽く、神経痛が残りません。発疹は皮膚に現れ始めると一晩毎に、花が咲くようにパッパとあっと言うまに拡がります。診断がついたら直ちに治療を始めなければいけません。まず(1)ウイルスを殺す薬の投与と、(2)痛みの治療の2本立てが治療の基本です。ペインクリニック以外では痛みの治療はほとんど行いません。経口での鎮痛薬投与では帯状疱疹の痛みに対してほとんど効果がありません。神経ブロックが有効ですが、単なる知覚神経ブロックよりも交感神経ブロックを伴う硬膜外ブロックの方が気持ちよく楽になるようです。痛みは我慢するものではありません。帯状疱疹の痛みを治療せずに放置すると疱疹後神経痛(難治性疼痛疾患)に移行する場合が多いのです。
帯状疱疹の出来始めはよく虫刺されと間違われ、かきむしってかきこわしたり、とんでもない塗り薬を塗って酷い状態にしてから来院する患者さんが結構いますが、餅は餅屋にまかせてください。これはと思ったらすぐに医者に相談してください。可能ならばペインクリニックが理想的(これは内緒)。たかが帯状疱疹、されど帯状疱疹。ご用心めされ。

 

萱場 泓郎
(松本市 萱場医院ペインクリニック)

スポーツに伴う中高年の膝関節痛

還暦を迎えた運動嫌いの妻がメタボ予防の為にと仲間に誘われて、ウォーキングを始めたのですが、3日も経たぬうちに膝が痛いといって中止しました。階段の昇降と正座が出来ず、椅子から立ち上がって歩き始める時に痛いと騒いでいます。

Q)どうしたんでしょうかね?

A)奥様の身長は156cm、体重が72Kgでしたね。腹囲はあえて聞きませんが立派なメタボリック症候群ですね(笑)。ウォーキングがきっかけになっているようですが、加齢とともに増加してくる変形性膝関節症と思いますよ。

Q)変形性膝関節症とは?

A)膝の関節軟骨の加齢・変性に機械的負荷が加わって発症しますが、やはり発症しやすい因子があります。@女性が男性の2倍ほど多く、A肥満、B内反・外反(O脚・X脚)の下肢変形、C過去に膝を傷めたことのある人、D膝を酷使する人等の5因子です。お花やお茶の先生、旅館や料亭の女将さん仲居さんのようによく正座をする女性に特に多く見られます。

Q)家内もお茶とお花を教えていて正座しています。O脚気味で太っています。5つのうち4つがあてはまりますね。ウォーキングはやりたいようですがどうしたらよいでしょう?

A)スポーツに伴う中高年の膝関節症の治療は原則的には保存的療法です。最低レントゲン検査は必要ですが診断確定後、痛みに対しては@経口的、経皮的(湿布、軟膏など)消炎鎮痛剤、Aヒアルロン酸、時にはステロイド剤の関節内注入、B理学療法として、レーザー線や赤外線、ホットパック等の利用、C膝を安定させるためにサポーターや足底板などの装具療法があり、整形外科医が対処してくれます。

Q)日常生活で心がけることは?

A)沢山ありますし大変重要な事ですが、「知るは易し、持続的実行は難し」です。
進行予防の為、@膝への負担を軽くするために、階段は手すりを利用し、杖を使い、長時間の正座をさけます。肥満解消もお忘れなく。
A運動療法としては太ももの筋肉、ことに前面にある大腿四頭筋の強化と膝関節の可動域訓練です。要は脚の筋肉をきたえ、関節を動かす事です。言ってることは易しいですね。しかし、実行は難しいです。「継続は力なり」です。お二人で早速始めて下さい。

Q)運動療法を具体的に教えて下さい。

A)椅子に座って、ゆっくりと膝の屈伸を行い太ももの前の筋肉をきたえます。入浴中温まったところで湯船の中で正座を3〜4分やってみましょう。
ウォーキング結構ですが、プールの中でのウォーキングは、浮力の働きで膝への加重が少なく、水の抵抗で筋力増強に効果的です。自転車こぎも有効です。あまり焦らずに翌日強い痛みが残らない程度の運動量からはじめて下さい。
 張 洛善
(松本市 あずさ整形外科医院)

デンタルインプラントについて

 歯が抜けてしまった後の治療法として、取り外し可能な義歯や両隣の歯を削り連続した歯を作って被せるブリッジという方法が一般的でした。しかし義歯では義歯を固定するための金具、をかける歯が悪くなりやすい外れやすい、噛み心地がよくない、といった欠点があります。
 ブリッジでも両隣の歯を削らなければならない、歯の欠損が多くなると対応できない、といった欠点がありました。従来からあるこれらの抜けてしまった歯を補う方法にありがちな欠点を補う方法として近年急速に普及してきているのがインプラント治療です。


 インプラントは歯が抜けてしまった後のあごの骨にチタン製の人工歯根を埋め込み歯を作る方法です。
 チタンという金属が骨の細胞と密着することがスウェーデンのブローネマルクにより発見され、日本では昭和50年代から臨床へ応用され始めました。様々な改良が加えられ現在市場に出回っている製品では成功率95%を超える臨床成績を得られるようになっています。
 インプラントは義歯やブリッジのように隣接する歯を削ったり傷めることがない、インプラント本体が骨としっかり結合しているので咬む力をしっかり支、えることができ、違和感がないなど他の方法にはない利点があります。一方手術を行わなければならない、保険が利かず治療〜費が高額、治療期間に3ヶ月6ヶ月程度かかる、などの欠点があります。
 

 インプラント治療が急速に普及するとともに、技術的に未熟な歯科医師が行った治療トラブルがマスコミでも報道されるようになってきています。信頼できる歯科医師を見分けることは難しいことですが、インプラント治療に関しては安易に抜歯をしない歯科医を選ぶということが大切です。歯科医師にとっては歯周病の治療にせよ神経を取った後の根の治療にせよ現在の医療制度では保険医は保険で治療することになっています。
 インプラントを積極的に行う歯科医師ほど、これら歯を保存するための治療を軽視して予後不安な歯は抜歯してインプラント、ということになりがちです。
歯が無くなるには虫歯や歯周病、かみ合せの不調和など歯を失うに至った原因があるはずです。インプラントを植えたからといって欠損は補えても歯を失った原因が無くなる訳ではありません。したがって歯を失った原因の改善は欠かせません。


 それが無ければ次々と歯を失い、歯が無くなるたびにインプラントといった悪循環です。患者は歯科医師に治療に先立ちこれらの病気の原因とその治療について十分な説明を求めるべきですし、歯科医師もそれら説明の上で患者の同意を得るべきであることはいうまでもありません。
 手術を伴うインプラント治療では安全に埋入手術を行うために事前のCT撮影は欠かすことができません。きちんとした歯科治療の上で行われるインプラント治療は、治療の選択肢でも第一選択肢となりつつあります。一度主治医にご相談ください。

理事 布山 徹
(安曇野市 布山歯科医院)