喘息死を予防するために

 

  「気管支喘息で死ぬことはない!」と思っていませんか。実はそうではありません。喘息は死に至る可能性のある病気なのです。統計によると、我が国の喘息死亡者数は、2000年以前には毎年5000〜6000人、2000年以降は3000〜4000人となり、2009年度には2000人台と減少しつつありますが、現在でもこれだけの多くの患者さんが喘息で命を落としています。
 喘息で死ぬ患者さんは重症者だけではありません。軽症、中等症の患者さんが急激な悪化でなくなったり、若者の喘息死が増えていることが問題になっています。また、高齢者は他の生活習慣病を合併していることが多く、元々軽症であっても、喘息発作が悪化すると、若年者より死亡の確率が高くなっています。いずれにしても、不適切な治療が喘息死につながります。

 気管支喘息は、慢性のアレルギー性炎症と定義されており、これを治療するために第一選択薬は吸入ステロイド薬です。1993年からこの薬が使用されるようになり、喘息死の減少、発作の予防に果たした役割は大変大きなものがあります。吸入ステロイド薬の改良、気管支拡張薬を含めた配合剤の開発もあり、我々専門家にとっては、気管支喘息のコントロールは昔に比べてずいぶんとやりやすくなったというのが実感です。しかし、まだ年間2000人近くの患者さんが死亡されている現状を鑑みると、決して満足すべきものではありません。
 これを受けて、「喘息死ゼロ」を目指して、日本アレルギー学会では、「喘息管理・予防ガイドライン」を作成し、学会員はもちろん、一般医家の先生方にもわかりやすい気管支喘息治療指針を普及しようと努めています。

 日本の喘息死者数は、10万人あたり8.7人で、カナダ1.6人、スウェーデン2.0人、オーストラリア3.8人、アメリカ5.2人と先進各国に比べて高く、この原因として吸入ステロイド薬が十分普及していないこと、適正に使用されていないことが指摘されています。
 吸入薬は、適切に使用(吸入)しないとその効果が発揮できません。吸入手技を確実に可能にするためには、薬の効能を正しく理解し、繰り返しやり方を指導していただくことが重要です。特に高齢者では1回では十分に吸入の仕方が会得できません。病態によっては、ドライパウダー製剤、エアロゾル製剤を使い分ける必要もあります。主治医によく相談して下さい。正しく薬が使えれば、喘息で死亡することはなくなり、より快適な毎日を過ごすことができるようになることでしょう。

   清水内科クリニック(長野市)
        清水 武彦