口腔と全身の病気の関係2 誤嚥性肺炎

 高齢者の死亡は脳や心臓の病気が原因であっても、直接の死亡原因は肺炎が3分の1をしめ、その中のほとんどが誤嚥が原因と言われています。
 口の中には数千億もの細菌がいます。口の中のケアが悪いと、口の中の細菌が気管から肺に入り肺炎を起こす可能性が高まります。誤嚥性肺炎には食べ物が誤って気管に入る場合と、睡眠中に細菌を含んだ唾液を吸い込んでしまう場合とがあります。普通は細菌が誤って入りそうになっても咳をすることにより吐き出すことが出来ます。

 しかし高齢者の場合、吐き出す力が弱いだけでなく、反射が低下するためにむせるということもなく知らないうちに誤嚥性肺炎を起こすことが多くなっています。肺炎で死亡する人の90%以上が65歳以上の高齢者であり、70歳を越えると死亡率は急激に高まりますが、加齢が肺炎の直接の原因ではなく、加齢に関連したいろいろな病気とその患者さんのおかれた状況が原因だと考えられます。

 のどの奥(咽頭)は食べ物・水分・唾液などを食道に嚥下し、空気を気道に吸気・呼気する分岐点です。ここにはふたがあって、食道か気道かどちらか一方が開いたり閉じたりする仕組みになっています。このふたの動きが正常でなくなると唾液・逆流した胃内容物・食べ物が気管に入ってしまいます。この場合、普通は咳反射により咳が出て誤嚥物は外に出されるのですが、咳反射が弱いと気管に吸い込まれてしまいます。
 誤嚥はある程度やむをえない面もありますが、誤嚥による肺炎は防ぐことが出来ます。高齢者に対する口腔管理は歯科医師・歯科衛生士による歯・義歯を含めた徹底的な清掃と歯科治療それに摂食・嚥下リハビリテーションが必要になります。1ヶ月にわたる集中的な口腔ケアをすることにより嚥下反射と咳反射の改善が見られことがわかってきました。

 口腔ケアはインフルエンザなどの気道感染の予防にも有効です。ある施設ではインフルエンザの発症は10分の1以下に減少しました。誤嚥を起こさないためには歯みがきや食事のときの姿勢が重要になります。脳梗塞の後遺症などで麻痺があって座ることは出来ないが自分で磨くことが出来る場合は麻痺の出ているほうを向き横向きになって、麻痺のない手で磨きます。

 座ることも自分で磨くことも出来ない場合は麻痺のあるほうを下にすると誤嚥の危険がありますので麻痺のない方を向き横向きになります。体を横向きにすることが困難な場合は顔だけを横向きにして口の中の清掃・歯みがきをします。 介助が必要な人の口腔清掃や食事をとるときは30度程度体を起こして行いますが、あごをあげないことが肝心です。あごを上にあげて食事をするのは危険です。

鈴木 信光
 辰野町 鈴木歯科医院