肛門科医の独り言

 いまどき流行のツイッターと思ってください。皆様と私は2008年12月のこのサイトを通じて、すでに〈シリ合い〉の仲となっております。むろん直接お尻を診せあってのシリ合いではありませんが、すでにまったくの他人でもありません。私はこういうつながりを大切にしたいと思います。このように縁あって〈シリ合い〉となったからには、私は皆様の悩みに責任をもちたいと思います。 レポートを読まれ、ハハハと笑っていただき、ストレスをふきとばしてくだされば、すくなくとも便秘の予防にはなるでしょう。

たまにスナックなどに行き、職業が医者だとわかると、ホステスの10人が10人「婦人科でしょう」といいます。きわどい話をする医者がみんな婦人科ということでは、 婦人科医が気の毒になります。婦人科が軟派で外科だから硬派とはかぎらないですよね。しかし婦人科のご近所にあたる肛門科となると、何か言いにくいものがあります。

「それじゃ、先生、何が専門ですの?」と改めて聞かれると、まことに弱いものです。「肛門科!!」では、どうも色気がなく、ムードをぶちこわしてしまいます。そのせいで肛門専門医は少ないのではないでしょうか。医学界全般も心臓や脳手術、臓器移植にいそがしく、「尻の面倒までみきれないよ。」です。大学の講義でも痔の話はほとんどありませんし、臨床講義で患者供賢はまずできないでしょう。まさか親にも見せない秘所を学生諸君の前にさらすなど、 肛門科の私でもできるものではありません。

 胃や子宮、お乳のない人はいても肛門のない人は一人もいないのです。肛門はたとえ人工肛門であっても、 一人につき1個はないと具合がわるい。これに比べれば、女性だけが所有する例のものなど生命の維持とは直接関係なく、だから年頃になって鎖陰にきづくということもありうることですが、鎖肛はただちに穴をあけないと死につながります。 こんなに大切な肛門なのに、 これほど粗末にされ軽視されている所もまた少ないものです。どうも人間は“穴”の話を恥ずかしがり、おへそより下の話は一般にビロウな話、エッチな話として、さげすまされています。毎日やっかいになっているくせに、そんなもの持っていませんよ。などという顔をしたがる人が多いようです。 ビロウな話、結構。エッチな話、結構。人間だもの。 その点、うちの入院患者さん達はえらい。 朝おきたら「おはよう」のかわりに「おい、出たか」があいさつになっております。

 肛門専門医にいわせると、肛門は身体の中心です。なぜなら肛門に故障があっては、シリの座った仕事もできないし、フンばりがきかない。その人間の生活が根底からおびやかされることになります。尻に火がつくとは、このことだと思います。
 たかが尻の病気というなかれ。痔もちの社長がカンシャクをおこせば、 その害は従業員全員におよぶ。医者に行くのは恥ずかしい。 おびただしい数の痔の家庭薬に費やされる金額に加え、 作業能率の低下など金に換算するなら、ものすごい数字になると思います。
 だから会社の経営をたてなおすためには、痔ばかりでなく健診をうけ、あらゆる病を未然に防ぐのが一番でしょう。と教訓をたれたところでおわりにします。  

渡辺 豊昭
(松本市 渡辺肛門科医院)