「子どもの心」相談の診療から

  少子化社会に突入しまして、地域に赤ちゃんの泣き声が途絶え、子どもたちが戸外で群がって遊ぶ様子が見られなくなって久しいです。小児科学会は乳幼児のテレビやビデオの長時間視聴が発達する脳に対する影響についての声明文を発表しました。小中高生のインタ−ネット、ゲーム、携帯メールが視力や昼夜逆転の生活など健康ばかりでなく、生の人間の体験や想像力を働かせる機会をうばっています。子どもたちを取り巻く環境はますます悪化の一途をたどっています。国連は過去二度も日本政府に「極度に競争的な教育制度のストレスよる発達障害、余暇やスポ−ツ活動の欠如、不登校数が膨大である」ことを指摘勧告してきました。
 わたしたちは、一般診療の傍ら5年前から「子どもの心」相談の診療を開始しました。取りあえず子どもたちが元気で明るい生活を過ごせるよう微力を尽くせたらという想いでした。

思春期外来で
 図1は日本の小中学校の不登校数です。現在約13万人いて、90年より急増し3倍を示してます。わたしたちが5年間で診た92例のうち、年齢分布は9〜17歳の思春期78例が一番多かったです(図2)。半数以上が不登校でした(図3)。

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図1 我が国の不登校の発現頻度


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図2「子どもの心」の受診者年齢分布

3.jpg 私たちの78症例で不登校の占める割合は56%です。

不登校と不登校傾向は56.4%(44例)です。

図3 不登校の占める割合


  初診時症状は頭痛、腹痛、が多かったです。次いで朝起きられない、だるい、食欲不振など不定症状です。診察、検査では異常がありません。表1は不登校44例の背景疾患です。適応障害が多く、友人関係やいじめに悩むのが特筆すべきことがらでした。元気な女の子が男子から「死ね、うざい、きもい」といわれ、黒板や携帯サイトに書き込まれます。それだけで学校でまったく孤立し、不登校やうつになるのです。
 いじめは陰湿で教師や親の前では見えない、交代で一人を執拗に繰り返す、メデイアが駆使されます。それで大人は何故そんなことで病気になるのかというのです。次は身体表現性障害でいわゆる心身症です。検査、投薬で改善します。精神疾患はうつ、不安障害は全般性不安障害、強迫障害、パニック障害です。

支援はどうする?
 まず子どもの心をていねいに聞き取ることから始まります。それから親御さんからも学校や家庭の様子など教えていただきます。症状やお話から子どもが訴えていることは何かを考えます。
 治療は子どもの自尊感情を高める援助をします。休養が必要であれば充分に心身の休養を図ります。特にいじめ被害者は加害者から守ってあげなければなりません。救出避難させることが大事です。
 不登校は親指導や環境の整備も大切です。学校,中間教室や児童相談所など関連機関と連携をとりたいものです。
 この間にわが子の学校崩壊に悩んだチームの一員が、親の会をたちあげて教師と一緒に現在も活動しています。

 

矢崎なつめ
(松本協立病院 小児科)