たとえ認知症になったとしても

私は飯綱町で開業しております。脳神経外科が専門ですが実質はかかりつけ医として日々の診療を行っております。ただ脳が専門ということもあり、認知症に関わることも多く、飯綱町が県の認知症地域支援体制構築等推進事業のモデル地域として本年3月まで活動したこともあり、認知症の啓発に携わった経験より、この病気の話を少ししたいと思います。

 何か変だと感じたら専門医をお訪ね下さい
 認知症とは、認知機能、わかりやすく言うと物事を判断する能力の障害で、高齢者に多いことから、高齢社会ではその対応が緊急の課題となっています。ただ、最近は若年性認知症が注目されています。18歳以上65歳未満の症状があるものを総称した言い方で、働き盛りの年代でも認知症になり得るということです。
 認知症かどうかのポイントは3点あります。第一は記憶の低下で忘れっぽくなる。第二は認知機能障害で人・場所・時間などの見当がつかなくなる。第三は今までの生活を続けることが難しくなる。また、認知症状は本人よりも周囲の人(家族など)が気づくことがありますが、具体的に言うと、「以前と何かが違うと思うことがあるか」「以前にできていた事で出来なくなった事があるか」「その人らしくなくなった事があるか」といった点が早期発見の手がかりとなります。いずれにしても早目に診断をつける為にも「何か変だ」と感じたら認知症相談医、認知症専門医療機関などを訪ねて下さい。認知症はれっきとした病気です。恥ずかしくもみっともなくもありません。ためらわず早目に相談して下さい。

 異常と思える行動も必ず理由があります
 認知症の原因となる病気は約70種ほどあると言われていますが、代表的なものは次のようなものがあります。
1アルツハイマー型認知症 (50〜60%)
2脳血管性認知症
 (20〜30%)
3レビー小体型認知症
 (10%)
4その他の病気が原因 
 脳血管性認知症は脳梗塞などが原因となるものです。その他の中には頭部外傷、脳腫瘍、薬物中毒、甲状腺機能低下症などがあり、治療で治るものもあり早期の受診がかかせません。
 認知症の主な症状には、主な症状の中核症状と、それに引き続く精神や行動の障害がみられる周辺症状があります。中核症状では様々な認知機能が障害され、記憶や判断力低下、実行機能低下(料理が手順よく作れない)、見当識障害(場所、時間がわからない)、失語(上手く話せない)、失行(動作が適切でない)、失認(見ている物がわからない)などがあります。周辺症状では行動障害(徘徊など)、精神症状(抑うつ、興奮、妄想など)、睡眠障害(昼夜逆転)などがあります。特に周辺症状は介護の上でも大きな問題となりますが、環境の調整、対応の工夫、適切な薬物治療などで改善する可能性が十分にあります。基本的に最も大切なことは、認知症本人の気持ちを理解しようとすることで、異常と思える行動も本人にとっては必ず理由があるということを理解して下さい。ですから周辺症状は何らかの身体疾患、不適切なケアや環境、介護者の過剰な介護負担など多彩な原因が絡み合って起こることもわかって下さい。

 たとえ認知症になったとしても…
 たとえ認知症になったとしても、われわれはその人を病人扱いせず一人の人間としてみること、そして、認知症になっても安心して暮らせ、人生を最後まで全うできるような町を作るためにも、地域のかかりつけ医として働きたいと考えております。

 長崎忠悦
(飯綱町 ながさき医院)